所長のミニコラム ~ Monthly column ~
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会計士補が就職難?
公認会計士の試験は第1次、第2次、第3次試験があります。第1次試験は大学の教養課程(1年2年の課程)を終了していると免除されます。第2次試験は一番の難関です。第3次試験は第2次試験合格後1年間の実務補修と2年間の実務経験を経て受験する最終試験です。第3次試験を合格すると公認会計士の資格が与えられます。
最難関の第2次試験は7月に行われ10月に合格発表があります。第2次試験を受かると会計士補という資格が与えられます。今年も10月に発表があり、約1,200人の合格者がありました。しかし、こうして合格したのにもかかわらず、400人ほどの第2次試験合格者が監査法人に就職できずにいる状況です。理由は、監査法人の求人数の減少です。
監査を受けている上場会社のリストラ→監査報酬のリストラ→監査法人の収益性の悪化→求人数の減少という構図で、第2次試験合格者が割を食っている状態です。監査法人に就職ができないと監査の実務経験がつめず、第3次試験の受験資格も確保できなくなります。苦労して合格したのに、これではかわいそうですね。
消費税の納税義務者が増えます
世の中ではあまり騒がれていませんが、平成15年度の税制改正で消費税の納税義務者がかなり増える改正がありました。改正前は2年度前の課税売上高(消費税のかかる売上高)が3,000万円超の事業者が納税義務者となっていましたが、改正後は2年度前の課税売上高1,000万円超の事業者が納税義務者となります。
この改正は、法人事業者の場合、平成16年4月1日より開始する事業年度から適用されます。つまり、平成17年3月決算から適用されます。個人事業者は、平成17年分から適用されます。
消費税の仕組みは複雑で、我々専門家でもかなり手を焼く税金です。選択肢の多い税金で、素人の方が届出書や申告書まで作成するのは正直申しまして、かなりリスクがあります。専門家に相談されることをお薦めいたします。
会計事務所の使い方
私どもの事務所には、他の会計事務所で顧問契約されていた方が、その契約を解除して当事務所と契約されるお客様がかなり多くいらっしゃいます。これらのお客様に会計事務所を変更した理由をお聞きするとだいたい以下のようになります。
- 税務調査の時に立ち会った税理士が税務署の言いなりになっていた。
- 節税に対してのアドバイスがない。
- 手書きでの帳簿の記帳を指導されているが、ベストなやり方とは思えない
- 記帳代行をやってもらっていたが、月次の報告が遅すぎる
- パソコン会計を導入したい
- 役員報酬を変更できない
- 顧問報酬が高すぎる
- 経理から労務管理、社会保険、労働保険、登記、法律問題までトータルでサポートできる事務所を探していた
今やインターネットで会計事務所を自由に選べる時代です。会計事務所もいろいろです。実際にはお付き合いしてみないと分からないというのが正直なところでしょう。しかし、「お互い馬が合う」とか「考え方が一致する」といった点も重要となるのです。
最近の求人結果
事務所で所員の募集を最近行いました。インターネットでの求人サイト、経理関係の専門学校における求人の掲示、ハローワークなどで求人募集をしました。
税理士試験も終わり求人のタイミングとしては比較的良好な時期です。今回の求人で特徴的であったことは以下のとおりです。
- 30歳以上の独身の方の応募が約8割を占めていました。
- 会計事務所経験者は全体の5%程度でした。
- 40歳以上の方の募集もかなりありました。
- 他業種からの税理士志望者の方がかなりいました。
また、私どもの事務所を選択していただいた理由として、「記帳代行中心の事務所ではこの先の発展が見込めず、将来が不安である」といった方が数人いらっしゃいました。更に「社会保険の取りやめ、給料の遅配が現在勤めている会計事務所であったので応募しました」といった方もいました。聞いてみるとやはり記帳代行を中心に行っている事務所です。
しかし、「記帳代行を中心にやっているから将来がない」ということはないと思います。ただ、事務所の経営を今以上に考えない会計事務所には「将来はない」と言えるのではないでしょうか。
ちなみに、当事務所のお客さまの自計化(お客様が会計ソフトに入力する)率は、95%です。記帳代行は全体の5%に過ぎません。
1円以上で会社設立が無条件にできる?
今年の2月から中小企業挑戦支援法により1円でも株式会社及び有限会社を設立できる制度が誕生しました。かなりの方がこの制度を利用して会社を設立していますが、この制度自体にはいくつかの制約があります。
- 現在会社の代表者となっている人、個人事業を営んでいる人は創業者としてこの制度を利用することができません。
- 商号や本店所在地に変更があった場合に経済産業局に届け出る必要があります。
- 貸借対照表が経済産業局で公開されます。
- 5年内に資本金を株式会社は1,000万円、有限会社は300万円にする必要があります(できない場合は組織変更をするか解散となります)。
特に 4. の要件はこの制度を利用する場合に重くのしかかってくる要件で、現実的にかなり厳しいものがあります。
そこで、この救済策として考えられたかどうかは分かりませんが、2005年の商法改正で現在商法で定められている最低資本金(株式会社1,000万円、有限会社300万円)の制度自体を廃止する方針が決められました。つまり、上記のような制約なしに、1円から会社を自由に作ることができるのです。
この方針はほぼ確実な決定で、既に最低資本金に満たない会社を作られた人、これから会社を作る人にとっても朗報となります。
休眠会社にご注意
最低資本金規制特例で資本金が1円から法人を設立できるようになって、わざわざ休眠会社を利用した開業は少なくなってきたと思われますが、休眠会社を利用すると思わぬ落とし穴があることがあります。
休眠会社を利用して起業した場合、その休眠会社が休眠する直前の決算書がないケースがあります。休眠直前の決算書がなくても何とか経理処理によりその休眠会社を引き継ぐことができますが、いざ融資を受けようとすると問題があります。
このようなケースですと、信用保証協会は保証をしてくれません。理由は休眠会社の決算の連続性がないからです。
保証協会の保証がないと中小企業の融資の道がほとんど閉ざされたと言っても過言ではありません。
起業するなら、やはり新会社設立からやったほうが良いみたいです。
ブッチャーの言葉
アブドーラ・ザ・ブッチャーの自伝を読みました。私はプロレスでは馬場派で、悪役のブッチャーのフォーク攻撃などを息を殺して見入っていました。現在67歳のブッチャーはまだ現役でリングに上がっています。貧しい生活と人種差別の中で、いままでメインエベンターであり続けたレスラーの言葉には、さすがに重みがあります。
<レスラーとしての成功の秘訣>
- まず自分の存在価値を知れ
- 見せるべきものを知れ
- 自分でできることは全て自分でしろ
- 他人の思いどおりにならず、自分で考え、ゴールまでのプロセスは自分で決めろ
- 他人に期待せず、他人を批判するな
- 言い訳をせず、他人に対する悪い感情はさらりと忘れろ
- いかなるときも自分を゛忘れさすな″
<ブッチャーを支え続けた言葉>
- 人は善良だから長生きできるとは限らない
- 犯罪者であっても長生きするものはいくらでもいる
- 過信しないことだ
- 人間はいいことも悪いことも受け止めながら生きていくしかないのだ
アブドーラ・ザ・ブッチャー著
社会保険制度
4月から社会保険の料率が変更されました。今までは、賞与に対する保険料率は低い料率が掛けられていましたが、改正後は賞与も含めた総報酬に対して変更後の保険料率が一律に掛けられます。
料率は健康保険、厚生年金、児童手当拠出金を含めて21.89%です。うち、給与所得者本人の負担分は10.89%です。中小企業の経営者にしてみれば自分の保険料も会社負担の保険料も払うのは一緒、つまり給料の21.89%を自ら負担している感覚となります。したがって、社会保険未加入の事業所もかなりあります。
数ヶ月前に、関西の事業者の方からご連絡をいただきました。「社会保険料が高いので自分の会社では社会保険に加入しなかったけれども、年をとった今になって老後の生活に不安を感じています。厚生年金に入っておけば良かったと」。
確かに国民年金と厚生年金では掛け金の額も大違いですが、老後にもらえる額も大違いです。しかし、この不況で運転資金も間々ならない状況です、社会保険料を払い続けるのも並大抵ではありません。今をとるか将来をとるかの問題ですが、会社あっての社会保険ということを考えると今のほうが大切になってきます。
会社を設立して間もない経営者が社会保険事務所に社会保険の適用の手続きで相談に行ったところ「社会保険に入ると保険料の負担が大変ですから、よく考えた上で入るようにしてください」と言われたということです。本来は法人であれば強制加入なのですが、社会保険事務所にとっても保険料の滞納が一番の悩みのようです。
源泉徴収制度-芸能法人
源泉徴収制度とは給料・報酬・配当・利息などの支払時に、一定の割合の税金を支払い者が天引きして納税する制度です。配当や報酬などの受取人が申告納税する前に勝手に一定額を納税されてしまうおせっかいな制度です。
なぜこのような制度があるかというと、報酬や配当などを受取った人が確定申告をしなくても税金を取り損ねないようにするためです。非常に税務署に都合の良い制度ですが、もらったお金は使ってしまうのが人の常、天引きされていた方が納税が楽なのは確かです。
この源泉徴収制度、報酬の支払については個人に対するものが対象で、原則として法人に支払う場合は源泉徴収する必要はありません。例外として芸能法人(芸能人の役務提供を内容とする法人)に対する支払について源泉徴収する必要がありましたが、15年4月1日以後に芸能法人に支払う報酬については税制改正により源泉徴収する必要がなくなりました。
最低資本金規制特例(1円会社)
資本金が1円でも株式会社や有限会社が設立できる制度が2月からスタートしました。当事務所にもお問い合わせがあり、実際に手続きも進行中です。通常の設立手続きと違う点は、銀行に3百万円や1千万円のお金を預けて保管証明書を取る必要のないことです。
例えば、資本金30万円の会社を作る場合、創業者や出資者、発起人の個人の通帳に出資する各人がトータル30万円のお金を振り込むことでことは足ります。
通常の設立手続きで、銀行から保管証明書を出してもらうのに、何週間も待たされたり、横柄な態度をとられたりしたという話はよく聞きます。しかし、この制度を使えばそんないやな経験をしなくても済むことになります。
青色申告特別控除
個人の確定申告のシーズンが始まろうとしています。会計事務所にとっては、正直言って恐怖のシーズンとなります。普段の業務に確定申告業務が完全に上乗せになるからです。
それはともかく、青色申告者にとっては青色申告特別控除は重要です。青色申告者であれば無条件に認められるのが10万円の青色申告特別控除です。そして、簡易な簿記によって作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告に添付している場合は45万円の青色申告特別控除が認められます。さらに、正規の簿記の原則に従って作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付した場合には55万円の青色申告控除が認められます。
ここで注意しなければならないのは、45万円や55万円の青色申告特別控除を受けるために貸借対照表と損益計算書を作成して確定申告書に添付して申告しても、45万円と55万円の控除をし忘れて申告した場合です。この場合、3月15日の申告期限後に「55万円の控除をし忘れました」と税務署に言ってももうダメです。45万円と55万円の特別控除を受けるには、申告書に「特別控除を受ける旨と特別控除を実際に控除すること」が適用の要件となっているためです。
しかし、この場合でも10万円の青色申告特別控除は認めてもらえます。
交際費課税の改正
平成15年度税制改正で交際費課税の改正があります。現行では資本金5千万円以下の法人に対して交際費の内、400万円までの80%を経費として認めています。今回の改正では資本金1億円以下の法人も対象となり、更に交際費の内、400万円までの90%を経費として認められるようになります。つまり、資本金1億円以下の法人は年間360万円(400万円×90%)の交際費を経費とすることができるようになるということです。
しかし、会社に必要な営業経費である交際費を資本金1億円超の法人には一切経費として認めないで、1億円以下の法人でも年間たったの360万円しか経費として認めていないのは、納得できません。個人消費が落ち込んでいるこのデフレ経済下、交際費を使った分だけ経費として認めれば、飲み屋さんも喜び、経営者や従業員も喜び、そして景気が少しでも良くなれば後から元は取れるのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか?
実際に昭和20年代では全ての交際費が経費として認められていたみたいです。