所長のミニコラム ~ Monthly column ~

12月のミニコラム

売上高と有利子負債

11月30日の日本経済新聞に債権放棄を受けた主な準大手ゼネコンの財務が掲載されていました。そのうち3社が売上高より有利子負債(有利子負債:銀行借入金、社債等の利子を支払わなくてはならない負債です。利子が付かない買掛金等は除かれます。)の方が金額が多い状態でした。

建設業の黒字会社だけの売上高に対する営業利益(「営業利益」:売上から売上原価と販売費及び一般管理費を差引いた残りの利益)に対する割合はおおよそ3%です。売上高が100億円だとすると、その3%の3億円が本業の利益です。有利子負債が売上高と同額の100億円だとして借入利率が3%であるならば支払利息は同じく3億円になります。これでは本業の利益がそのまま利息の支払に回ってしまい、手許には1銭も残らないこととなります。ましてや借入金の元金の返済などできるはずありません。

有利子負債が売上高より大きいということは売上高営業利益率が3%、借入利率も3%とすると利息も払えないということです。事の重大さがご理解頂けたでしょうか。

2001.12.01 公認会計士・税理士 井上 修
11月のミニコラム

税務調査から

個人事業をやられていたお客様から税務調査が入って、訳が分からないまま税務職員の言い成りになっていたら、追加納税の納付書が突然送られてきて、「これは払わなくてはいけないのでしょうか」とのご連絡を頂きました。

よくあるパターンですが、税務調査をやった後に税務職員が自ら修正申告書を書き上げてきて、その説明(このお客様はあまりその説明を理解していなかった)をした後にその場で「はんこを押してください」と言われて押してしまうのです。はんこを押した申告書は税務職員が署に持って帰って自ら修正申告書を提出してしまうのです。

本来、納税者が修正申告書を書いて(「申告書は自分で書きましょう」と税務署は毎年3月くらいに宣伝しているのに)自らの意思で税務署に提出するの必要があります。修正申告書を提出した後だとこちらも助けようがないのです

その場ではんこを押さず、一呼吸入れてみてはいかがでしょうか。

2001.11.01 公認会計士・税理士 井上 修
10月のミニコラム

会計事務所も経営難?

従業員の募集広告を出したところ、実務経験20年で税理士の資格をお持ちの方が募集にいらっしゃいました。話を聞くと、勤めていた会計事務所が不景気となり、その煽りを受けて退職したとのこと。なんとも気の毒な話でしたが、この業界も不景気の影響を受けているみたいです。

税務調査の立会で税務調査官との雑談の中でも、「税務署を辞めて税理士として独立する職員がほとんどいなくなった(税務署に10年以上勤めると、税理士試験の税法科目が免除され税理士としての資格を有しやすい)」と言っていました。確かに独立してリスクを背負うより、公務員であれば超安定した生活がこの不景気な世の中でも保証されますから、無理して独立しないわけです。

私の事務所にも毎日のようにメールやDMで「会計事務所の生き残りセミナー」といった類の案内が来ています。しかし、そもそも会計事務所は税金だけ計算するところではなく、お客様の会社経営のサポート役という重要な役割も担っているはずです。そのサポート役が自ら経営難になってしまっては仕方がありません。他人に会計事務所の経営を指南されているようでは、お客様の経営指導などできるはずありません。

私はこの不景気がチャンスだと思っています。
振替伝票をいつまでもお客様に書かせている伝統的な会計事務所より安価で高品質のサービス提供をすれば、必ず成果が出ると自信をもってやっています。まあ、見ててください。

2001.10.01 公認会計士・税理士 井上 修
9月のミニコラム

運転資金の借入

渋谷区の中小企業融資斡旋制度では小規模企業の運転資金として金利0.8%で500万円まで融資してくれます。金利は500万円借りても年間4万円です。だからといって運転資金の借入は慎重にしなくてはなりません。

運転資金の需要は売上拡大期の需要と売上下降期の需要があります。売上拡大期の運転資金の借入は仕方ないとしても、売上下降期の運転資金不足のための借入はリスクがあります。もともと運転資金不足ということは、借りたお金も即運転資金として使われ、更に借入の返済が運転資金不足に追い討ちをかけます。もともと不足している運転資金を一時的に借入で補完しても、売上下降期には運転資金はすぐに枯渇し、借入金の返済額が更に運転資金の不足に上乗せされてしまうのです。

納税資金とか具体的な目的のある一時借入ならともかく、売上高が人件費などの固定費をカバーできないような状況での運転資金の借入は危険です。

その前に、徹底した固定費の見直し、今後の事業予測の検証をする必要があります。安易に借りて手許に資金があると、厳しいリストラや大胆な経営判断がしにくくなります。

2001.09.01 公認会計士・税理士 井上 修
8月のミニコラム

給与課税

ちょっと前では「都庁の役人が水増し領収書、架空の領収書を使って経費を水増し請求していた」とか、最近では「外務省の役人が私的な物の購入に公金を充てていた」などの事件があります。

都庁の役人も外務省の役人もサラリーマンです。サラリーマンが定時の給与以外の金銭を雇い主である役所からどんな形にしろ自分のものにしてしまったら、それは定時以外の給与とされてしまいます。

そうなると定時の給与と定時以外の給与が合算され、遡って不足分の源泉所得税を払い、その後、住民税が追っかけるようにして課税されます。

「不正に受け取ったお金を後で返せば課税されない」という考えもありますが、現行の税務実務では課税されるケースが多いようです。悪さをやった役人にちゃんと課税しているのでしょうか・・・ 課税は公平に!

2001.08.01 公認会計士・税理士 井上 修
7月のミニコラム

広告の自由化

電車の社内広告で弁護士事務所の広告が目に付くようになりました。弁護士の広告規制が無くなったからです。同様に税理士においても広告規制が無くなろうとしています。税理士も他の職業と同様に自由に競争し合うような時代です。これが本来の姿だと思います。

お客様は何を要求し、その要求に対して如何に会計事務所が応えるのか。個々の会計事務所の能力がいろいろな面で試されることとなるでしょう。「お客様とは俺の親の代からのお付き合いだから平気さ」とか呑気なことを言っていると、他のやる気のある会計事務所にお客様を取られてしまう、そういった時代の到来ではないでしょうか。

2001.07.01 公認会計士・税理士 井上 修
6月のミニコラム

V自回復の演出

日産の決算が発表され、日産のホームページにおいても「税引後利益は3,311億円となり、前年の▲6,844億円の赤字から1兆100億円の増加となった。

これは、過去最高の結果である。」とV字回復を自慢しています。数日前の新聞に「意図的に前期は会計処理上ぎりぎりまで許される損失を計上して、その跳ね返りで翌期に多額の利益を出した」とありました。

会計理論上、見込める損失はなるべく前倒しで計上すべきとする「保守主義」という考え方があり、利益を過大にするのは認められませんが、損失を過大にするのは容認される風潮があります。これを逆手に取ったゴーンさん、さすがという感じです。

欧米に何10年も遅れて新会計制度を受入れて大騒ぎしている日本の会計など、赤子の手をねじる程度のことかもしれません。

2001.06.01 公認会計士・税理士 井上 修
5月のミニコラム

ASP

ASPとは「アプリケーション・サービス・プロバイダー」の略ですが、日本語では「実用ソフト供給業者」となるのでしょうか。簡単に言うと、各種ソフトを購入または製作することなく、ネット上の各種ソフトをインターネット上で誰でも利用できる(有料)システムです。このASPのメリットはインターネットに接続できる環境にあればどこからでもネット上のソフトを利用できることです。沖縄と北海道から同時に同じソフトを利用することができるのです。アメリカではASPを利用した会計処理が既に広く行われているようです。

日本もブロードバンドの普及に従い、ASPでの会計処理が普及する日は近いと思われます。

2001.05.01 公認会計士・税理士 井上 修
4月のミニコラム

税理士の平均年齢

税理士の平均年齢が60歳代であるということを聞き、思わず「え・・」と聞き返してしまいました。原因は税務署を退職したOBの人が退職後に税理士登録をすることによるものでした。これなら理解できますが、一般の人が聞いたらびっくりすると思います。

税理士になるのには、このように税務署に勤めた人及び大学院の修士課程を終了した人及び5科目の試験を合格した人、それと私みたいな公認会計士や弁護士資格を持っている人が税理士になれます。このように税理士になるルートは様々あり、それぞれの得意分野も当然違うわけです。税理士を選択するに当たっては、どういったルートで税理士になったのかを聞いてみるのも良いかもしれません。

2001.04.01 公認会計士・税理士 井上 修
3月のミニコラム

会計ビックバン

2000年3月期に税効果会計、2001年3月期に退職給付会計、販売用不動産の含み損処理の厳格化、2002年3月期に持ち合い株式の時価評価、固定資産の減損会計の導入(予定)と新会計制度が目白押しです。私も20年前からおよそ10年間、会計監査業務をやってきましたが、税効果会計などは20年前のアメリカの会計基準では当たり前の会計処理でした。

税効果を導入するか、しないかは、株主への配当の原資となる税引後の当期利益に大きく影響します。20年以上も、日本の会計処理基準により株主が不利益を被っていた可能性もあったのにそんな声は聞かれませんでした。

日本企業が弱体化し、外資がどっと国内に流れ込んで来てはじめて「会計ビックバン」です。内々の旧き良き時代は過ぎ去ったようです。

2001.03.01 公認会計士・税理士 井上 修
1月のミニコラム

会計事務所のあり方

パソコンの普及及びインターネットの浸透により、会計事務所業界は大きく変わりつつあります。実際に会計業務に関しては会計士・税理士の資格がなくても誰でもできます。

三菱商事が会計処理業務専門の子会社を作ってほぼ旧来の会計事務所と同じような業務を始めるといった事も新聞に出ていました。では有資格者(公認会計士・税理士)はこのような競合の中で何をもって勝負するのかということが問われています。

もう資格があるからとボケッとしていられません。 「能力・信用・人格」を大前提とした「お客様のためのプロフェッショナルなサービス提供」、これを当事務所は目指しています。

2001.01.01 公認会計士・税理士 井上 修