週刊税務調査日記

貸倒れをめぐる調査 (5)

第210号 2006/5/29

税務調査で、法律上の貸倒の要件を満たしていないことが発覚しました。

そこで、未回収売掛金のある得意先が実質的に破綻状態であることを、何とか税務署に認めさせることが必要になりました。

具体的には、前期末時点でこの得意先が債務超過の状況にあることを証明することです。

■会計事務所(担当者)

「所長、どうしたらよいですか?」

■会計事務所(所長)

「その得意先の決算書は手に入んないのかい?」

■会計事務所(担当者)

「ええ、それは無理です」

■会計事務所(所長)

「その得意先が、決算日現在で債務超過の状態になっていることを証明できれば良いのだがね・・・」

■会計事務所(担当者)

「証明ですか・・・・」

「そうだ! その会社の破産管財人である弁護士に電話して、納税者の決算日現在で得意先の会社が債務超過の状況にあることを証明してもらいましょうか?」

■会計事務所(所長)

「なるほど! グッドアイデアだ!」

「さっそく連絡してみな」

こうして、担当者は弁護士に証明書の発行を電話で依頼しました。

果たして、このようなお願いが通るものなのかどうか・・・・

数日後、弁護士事務所からFAXが届きました。

■会計事務所(担当者)

「所長、弁護士から債務超過であることの文書が送られてきました」

■会計事務所(所長)

「そうか」

「なかなか話の分かる弁護士だね」

こうして、弁護士からの文書が手に入り、あとは調査官に納得してもらう必要があります。

数日後、担当の調査官から連絡があり、最終的な詰めの話をしたいので、税務署まで来てほしいといった連絡が入りました。

弁護士からの文書を手に税務署に向かいます。

●税務署

「お忙しいところ恐れ入ります」

「さっそくですが、貸倒損失の件は法定要件を満たしておりませんので、修正申告をお願いしたいのですが?」

「貸倒損失として処理した金額が多額なため、かなりの修正税額となりますが、宜しくお願いします」

■会計事務所

「その件なんですが、この書類をチョッとみてもらいたいのですが・・・」

と言って、調査官に弁護士からの債務超過の証明書を渡します。

To be continued 

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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