週刊税務調査日記

特別の目的のあった調査(3)

第27号 2002/9/9

調査官が会社がいつもお歳暮やお中元で使っているデパートのことを聞いたことで今回の調査の目的が分かりました。

話は半年前に遡ります・・・

前社長から事務所に電話がありました。

▲前社長

「ちょっとお聞きしたいのですが 、よろしいですか」

■会計事務所

なんか改まった言葉遣いで電話をしてきました。

「はい、何でしょうか」

▲前社長

「先生、私がデパートで個人的に貴金属などのを買った時の領収書を会社を経営している友人にあげていたところ、その友人の会社に税務調査が入ったと連絡がありました」

「そして、その領収書が調査で問題になり、調査官がデパートまで行ったみたいなのですが、私にまで影響がありますか?」

■会計事務所

「社長があげた領収書を、その友人の社長さんが会社で使って交際費かなんかで落としたところ、税務調査で問題になったということですね?」

▲前社長

「そのとおりです。参りました。」

「デパートまで調査に行かれたら、誰が買ったものか分かってしまいます」

「私が買ったことが分かったら、私にも影響がありますでしょうか?」

■会計事務所

「社長には直接的な影響はないと思いますが 、こういったことはやってはいけませんよ」

以上のような、前社長から電話で相談を受けたことを思い出しました。

税務署は前社長の友人の会社の調査で、デパートの領収書は前社長からもらったものであることを突き止め、「このようなことをやった人(前社長)なら自分の会社でもで個人的なデパートでの買い物の領収書を、会社の経費で落としているに違いない」と踏んで調査に来たのでしょう。

これが今回の税務調査の特別の目的です。

ですから、現金で支払った領収書綴りを1枚1枚めくって、デパートの領収書を必死になって探していたのです。

しかし、残念なことに(?)前社長は、自分の個人的な買い物の領収書を友人にあげていましたが、自分の会社では一切公私混同はなかったのです。

私は黙って、税務調査の終わるのを待っていました。

「カ~ン」と12ラウンド終了のゴングが鳴り、税務調査終了です。

指摘事項はありませんでした。

「特別の目的のあった調査」はこれでおしまいです。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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