週刊税務調査日記

退職金でもめた調査 (7)

第263号 2007/7/2

今現在は、税法で退職給与引当金の計上額を損金に算入することは認められていませんが、以前は認められていました。

退職給与引当金の計上をする場合には、法人税の申告書と共に退職給与規程を税務署に提出することが要件だったのです。

ですから、過去において税務署にそのために作成した退職金規程が提出されていることは十分考えられることです。

●税務署

「まぁ ここで押し問答をしていても仕方ないですから、この件はここまでにします」

「単刀直入に税務署としての考えを申し上げます」

「まず、奥様は前回の税務調査で、実質的に経営にタッチしていたということですので、みなし役員となり期中で増額した部分の給与に関しては、損金算入は認められません」

みなし役員とは、会社法上の役員ではないのだけれども、配偶者も含めて一定の持株があって、かつ経営に従事している従業員は、税法上役員とみなされるというものです。

確かに、社長の奥様は役員登記はされていませんが、社長は筆頭株主で、前回の調査で「経営に従事している」と言い切ってしまったことから、みなし役員の要件には形式的に該当しそうです。

「それと、奥様の退職金に関しては、当初税務署に提出されていた規程にしたがって計算した金額が本来の退職金であるとして、実際に支給した額との差額は賞与とします」

退職金として支給したものを賞与として課税されると、給与額の上積みとなって所得税と住民税が計算されますので、追加納税額はかなりの金額となります。

▲納税者

「ん~あまり良く理解できないのですが、税務署の言うとおりに課税されると、追加で納める税金はかなりの額になるのですか?」

●税務署

「そうですね」

「追加で600万円ほど納めていただくことになります」

▲納税者

「600万円・・・」

■会計事務所

「まぁ、これはあくまでも税務署側の見解ですから、当方としても更に検討させていただきたいと思います」

「今日のところはこれで」

ということで、調査は終わり調査官は帰っていきました。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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