週刊税務調査日記

教育的指導の税務調査

第127号 2004/9/13

個人で手広く不動産経営をやっている事業者に、税務調査に入りたいとの連絡が会計事務所にありました。

この事業者はマンションアパートを約60棟くらい所有しています。

しかし、バブル期に銀行借入によって購入したため、かなりの額の借入金が今も残っています。

したがって金利負担が大きく毎年不動産所得は赤字です。

通常、大幅に所得が赤字である場合は、税務調査で問題点が指摘されてもその赤字幅が縮まるだけで、追加で税金を取れないため、税務調査の対象になりにくいのですが、今回は特別な目的でもあるのでしょうか。

調査当日です。

●税務署

「はじめまして○○署の税野と申します」

年齢は50台前半でしょうか。肩書きはまだ上席調査官です。

つまり、係長クラスです。

出世コースからはもう完全に外れているのでしょう。

■会計事務所

「よろしくお願いします」

しばらくお茶を飲みながら世間話を交えた雑談です。

生真面目そうな調査官で、こちらが笑をとる話を振っても愛想笑だけで乗ってきません。

なんか、やりにくそうなタイプです。

●税務署

「それでは、早速調査をはじめたいと思いますが、その前にひと言」

「基本的に税法に従わない処理に関して国税当局が否認するのは当たり前ですが、税法に反するかどうか見解が分かれる問題についても、上からどんどん問題点として上げろと言われています」

「そして問題点をどんどん上げて、それに不服であるなら裁判で決着をつければ良いと言われていますので、その気で調査します」

「どうかご協力をお願いいたします」 と相手を威圧するような顔つきと言い方で一気にまくし立てました。

■会計事務所

なんだ、この人は。

調査が始まる前から気合十分です。

選手宣誓のようなことを言ってこちらを威圧しようとしているのでしょうか?

納税者もポカ~ンとした顔で、呆気にとられています。

「参ったな、こういうタイプの調査官も初めてだな・・・・」 と心の中でつぶやきます。

戦闘開始です。

To be continued.

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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