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週刊税務調査日記

もめた調査(8)

第24号 2002/8/19

退職金でもめている税務調査の件で、年末の20日に○○税務署に納税者と行くことになりました。

個人の税金に関しては税務署のシステムがどのようになっているのかは知りませんが、年内に決着をつけるというのがルールになっているようです。

ですから12月の20日を選んだわけです。この日に決着をつけざるを得ないはずだからです。

こちらの戦略の一つです。

税務署に着くと、納税者の方はもう来ていました。

▲納税者

「おはようございます」

■会計事務所

「おはようございます」

「退職金の件では引き下がりませんから」

▲納税者

「分かりました。宜しくお願いいたします。」

そして、税沢さんの担当部署に行き、応接に通されました。

年末とあって、税務署員はほとんど署内にいます。

みんな「こんな時期に何だこいつらは・・・」というような目で見ています。

こちらも闘志が湧いてきました。

しばらくして、税沢さんと上司の統括官である税田さんが来ました。

名刺を交換して、統括とは初対面です。

●税務署(統括)

「話は調査官の税沢から聞いています。ところで今回の件に関して、納税者の方はどのようにお考えですか」と質問調できました。

▲納税者

「こちらの事務処理の不手際で納税額が過少となり、大変申し訳なく思っています」

●税務署(統括)

「それだけですか?」

■会計事務所

「それだけですか」とはどういうことですか?

「納税者は追加納税と延滞金や過少申告加算税、そして執拗な税務調査によって既に制裁は受けていると思いますが」とやり返す。

その後、双方のジャブが飛び交う中、本題の退職金の問題に話は進みます。

●税務署(統括)

「先生はこの退職金についてはどのようにお考えですか?」

■会計事務所

「まるっきり問題のない処理であると思います」

●税務署(統括)

「法人成りして今現在パートナーとして働いている個人事業時代の元従業員に、多額の退職金を支払うような恣意的な処理は認められません」

■会計事務所

「退職金としては常識はずれな金額ではありません。また、「この従業員は良くやってくれたから退職金を多く出そう」「この従業員は働きが悪かったから退職金は少しだけにしよう」などということは中小企業ではよくある話です。

恣意的な処理になるのは、退職金規程もない中小企業ではあたりまえの話ではないのでしょうか。

●税務署(税沢さん)

「同業他社の退職金の支給実績などを調べ上げて更正決定してもいいと思っています」

「また、再度調査をすることも考えています」

「さらに、得意先への反面調査も考えています」

と、プレッシャーをかけてきます。

■会計事務所

「そんなことを言っても、年内に決着しなくてはならないはず。脅しに間違いない。」

と強い信念をもって言い返します。

「どうぞおやりになってください。

しかし、再調査は拒否いたします。また、得意先への反面調査により納税者の方が不利益を被った場合には、しかるべき法的な対抗手段を講じます」

双方、沈黙の時間が流れます。

腕時計をみると11時40分です。お昼まであと20分。

お昼のチャイムを聞くまでに税務署も決着をつけたいはずです。

お昼をはさんでまでやるような問題でもないし、落し所を探っているに違いありません。

税務署がここまで執拗にくいさがる理由が少しずつ分かってきました。

まず、調査官の教育のためです。

「このくらいやらないとだめなんだぞ」といったような税沢さんへの教育的指導の一環かもしれません。

次に、統括官と調査官の個人的な感情です。

「売上計上漏れをしても平然としている」とでも思っているのでしょうか。

しかし、納税者にとってはいい迷惑です。

沈黙の中、切り出します。

■会計事務所

「統括。もうお昼も近いですし、そろそろ決着したいのですが。」

「今回の件で多額の売上計上漏れが判明した件に関しては、理由はどうあれ大変ご迷惑をおかけいたしまして、誠に申し訳ございません」と言いつつ、統括と調査官の前で私が頭を下げました。

そして、すかさず「退職金の件に関しては、いろいろなお考えはございましょうが、今回はご理解いただき、売上計上漏れの件のみで修正申告をお願いできないでしょうか」と下手に出てまた、頭を下げました。

●税務署(統括)

「いや、先生に頭を下げてもらっても困るのですが・・・」

と言い、そして調査官の税沢さんに向かって「先生もそのように言っていることだし、今回はそうしたらどうかな」と働きかけました。

これに対して、税沢さんは不満そうでした。反応を見せません。

そこですかさず、「税沢さんありがとうございます。今回はこれでお願いします。」とたたみかける。

統括官も「今回はそういうことで修正してもらおう。それでいいだろ」と税沢さんに言う。

すかさず「ありがとうございます」と言って決着する。

修正申告書の用紙をもらい、「よいお年を!」と言って税務署を後にする時にちょうど「キンコンカンコン」とお昼のチャイムが鳴りました。

さんざんやり合っていながら、最後は頭を下げて決着です。税務職員もプライドがあります。

やはり「上げたり下げたり」でその場の状況を見て立ち会うことも必要です。

退職金は結局、問題にされませんでした。頭を下げるのはタダです。

下げたあとに舌を出していれば良いのです。結果all right です。

こうして、長かった調査も終わりました。

やれやれ・・・

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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