週刊税務調査日記

飲食店の調査(6)

第6号 2002/4/15

税務調査官の「おかしいな、2月15日の売上伝票に私が食べたもやしそばが載っていないな」のひとことで雰囲気が変わってきました。

内偵調査といって、税務調査官が客に成り済まして納税者の経営するお店に行って食事することがあります。

「レジは誰が打っているのか」

「売上伝票はお客さんの注文どおりに書いているか」

「売上伝票に連番が振ってあるか」

「レジはその都度打っているか」

「レジの代わりに電卓で計算してお金をもらっていないか」

  等などを注意深くそばを食べながら見ているはずです。

その時調査官が食べたものがもやしそばで、それが売上伝票に載っていないと言っているのです。

●税務署

「なぜ載っていないのですか?」

▲納税者

「いや、私には分りません」と社長さん。

●税務署

「では、分る人を呼んできてください」

「あの日は確か店長さんが売上伝票を書いていましたから、店長さんと板さんを呼んでください」

▲納税者

「わかりました」と社長さんが慌てて店に電話しました。

ちょうど午後3時くらいで、店長さんと板さんもしばらくして会社事務所に到着しました。

▲納税者

「税務署の方が2月15日にお店で食べたものが売上伝票に載っていないのはなぜかと言っているのだけど、どうしてなのか」

と社長さんが2人に問いかけました。

すると板さんが「ああ、あなたが店に来たのを覚えていますよ、税務署の方だったのですか」と言い、「確かあなたはもやしそばを注文しましたよね」と調査官の食べたものを覚えていました。

●税務署

「すごい記憶力だな、覚えてましたか」

「ところでなぜ売上伝票にないんですかね」

▲納税者

「分りません。ですけど無いはずないです」と店長。

店長は入ってきた時から緊張している様子で、売上伝票の束を必死にめくり始めた。

「おかしいな、何でないのかな」と店長は困った様子です。

「何でないんだよ」と社長も興奮してきました。

●税務署

「店長はお昼時はレジを空けっぱなしにして現金を出し入れして、いちいちレジを打ってなかったですよね」

▲納税者(店長)

「昼時はとてもレジをいちいち打っていられる状況ではないですよ」

「忙しくてそんな事をしていたらお客がさばけないですって」

●税務署

「私の食べたもやしそばの売上伝票を捨てて、その分レジを打たなかったのではないのですか?」

▲納税者(店長)

「私が売上代金をごまかしたということですか?」と真っ赤な顔をして語気を強めた。

「俺は絶対にそんなことをしていない」 

店長は必死に否定しているが、状況は店長にとって不利になってきました。

この後どうなることやら・・・・・・

                         To be continued.  

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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