週刊節税教室

新制度による贈与 No.2

贈与税・相続税
第70号 2003/2/10

☆質問

『新制度による贈与税は、「相続時精算課税制度」と呼ばれていますが、相続税

との関係を教えてください?』

★回答

従来からの贈与税(以下「旧贈与」と言います)と新制度による贈与税(「新贈与」

と言います)の一番大きな違いは、親から子に贈与した財産が、旧贈与では親の

相続財産に入らなかったのですが、新贈与では親の相続財産に含まれることで

す。

☆質問

『旧贈与で毎年110万円の基礎控除を使って親が亡くなる20年後までに毎年贈

与して、合計で2,200万円贈与しても親の相続財産には入らなかったのに、新贈

与では今年2,500万円贈与しても、親が亡くなった場合には全額相続財産になる

ということですか?』

★回答

そのとおりです。

ですから、新贈与は将来相続税がかからない人と確実にかかる人とで分けて考

えると理解しやすいです。

☆質問

『ではまず、将来相続税がかからない人の場合はどうでしょうか?』

★回答

親の財産が相続税の基礎控除以下であれば、将来の相続税の心配もなく新贈

与で親から子に財産を贈与することができます。

☆質問

『相続税の基礎控除とは、5,000万円に相続人の数×1千万円を足した額です

ですよね』

★回答

そうです。

相続人が2人の場合は7千万円の相続税の基礎控除がありますから相続時に

親の財産がそれ以下であれば相続税はかからないのです。

つまり、生前に新贈与を使って2,500万円を贈与しても、相続時の相続財産が

3千万円とすると、それに生前贈与2,500万円を加えても相続税の基礎控除以下

となり相続税は発生しないのです。

☆質問

『では次に、確実に相続税がかかる人については、どうでしょうか?

確実に相続税の基礎控除以上に相続財産のある親から子への新贈与による生

前贈与は、結果として相続時点で税金がかかるのですから、あまり利用のメリット

がないということですか?』

★回答

そんなことはありません。

親が賃貸マンションを持っていて、かなりの高額所得者であるような場合に、新

贈与を使えば節税になります。

新贈与を使って親が所有する賃貸マンションを子に贈与すれば、賃貸マンション

から生じる不動産所得を親から子に移転できるのです。

たしかに親が亡くなって相続があれば、その時点で贈与された賃貸マンションは

親の相続財産に加算されて相続税がかかります。

しかし、賃貸マンションからの不動産所得は子に贈与したときから子に移り、親

の財産を積み上げることはなくなります。

結果として、相続税対策にもなり、かつ、親の所得税対策にもなります。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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