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不動産登記と税金

第240号 2014年5月

1.はじめに

不動産の売買をすると、引き渡しの際に必ず司法書士が立ち会います。売買代金の決済が終わると、立ち会っている司法書士が「おめでとうございます」とお祝いの言葉を述べて、権利書や押印された書類を持って急いで登記所に向かいます。不動産を売った人は売買代金が手に入ってひと安心ですが、不動産を買った人は司法書士がする所有権移転登記が終わらないとひと安心できません。

2.登記は早い者勝ち

なぜ不動産を買った人が、不動産の登記が終わらないとひと安心できないかというと、不動産の登記が自分名義になって初めて、「この不動産は私のもの」と第3者に言うことができるからです。

悪い売主がいて、ひとつの不動産を同じ日にAさんとBさんに売却したとします。

まずAさんが売買代金の決済をして、「登記は明日でもすればいいや」なんて呑気に構えていたところ、売主は同日にBさんとも売買をしてBさんは同日登記申請したとします。

Aさんが翌日自分名義にするために登記申請しても、登記所から「先に同一物件について登記申請が出ているので受け付けられない」と言われ登記できません。

この場合、先に売買したAさんが「この不動産は自分のもの」と主張しても、Bさんが自分の名前で先に登記しているため、所有権はBさんにあることになります。このように登記は早い者勝ちとなりますので、売買後速やかな登記手続きが必要となるのです。

3.登記の情報は税務署へ

不動産を売却もしくは購入して、登記名義に異動があると、その情報は税務署に伝わります。ですから、不動産を売却して税務申告をしないと、税務署から連絡が来ます。また、不動産を取得した場合でも、「不動産の購入資金は、借入ですか? 自己資金ですか?」などと余計なことを文書で聞いてきます。登記の情報は税務署に筒抜けなのです。

4.登記しなければバレナイ

不動産の異動を登記すれば税務署に筒抜けになるとすれば、登記しなければ税務署は分からないのでは?と考えます。

親から子に不動産を贈与して、名義変更の登記をしないで時効になるのを待つということは可能でしょうか?

まず公証役場に行って、親から子に不動産の贈与をしたことを公正証書にしてもらいます。これは贈与の事実に公的なお墨付きをもらうためです。しかし、贈与された子は自分名義に登記をすると税務署にバレテしまうため、登記もしなければ贈与税の申告もしません。そして、税務上の時効となる7年間じっと待って、その後に子名義に登記をします。税務署から問い合わせがあったら「7年より前の贈与ですから時効です」と言い放ちます。

5.結局ダメでした

しかし、こんなことができてしまうと課税の公平が保たれません。税務署は、時効まで所有権の移転登記がされていないこと、公正証書の作成目的が租税回避以外の必要性がないこと、公正証書の記載内容と異なる行為が行われたこと、などから公正証書は実態を伴わない形式的な文書であるとして、その時点での贈与は成立していないと判断しました。

そして、親から子への不動産の贈与が成立した日は、所有権移転登記が行われた日が相当であるとする処分をしました。つまり、時効は成立しなかったのです。

6.2世帯住宅の登記

親と子がひとつの建物に住む2世帯住宅で、各戸が構造上完全に独立していて、相手世帯のスペースを通らないで出入りできる場合は、登記の仕方が二通りあります。

ひとつは共有登記です。建物全体をお金を出した割合で登記します。親が建物代金の40%を出し、子が残りの60%を出した場合には、持ち分割合40:60の共有登記となります。

もうひとつが区分登記です。区分登記は親と子が自分たちの居住部分をそれぞれ1戸の建物として登記するものです。自分の居住部分に係る建築費を負担していないにも関わらず区分登記をすると、実際に建築費を負担した人から負担をしていない人への贈与となるので注意が必要です。

7.共有登記と区分登記の税金

地方税である固定資産税や不動産取得税では、税額の減額措置がありますが、いずれも床面積の上限が設けられています。共有登記の場合は、その建物全体の床面積で判断されます。一方、区分登記の場合は、各戸の床面積で判断されますので、建物全体の床面積が上限を超える場合は、区分登記の方が有利と言えます。

8.相続税では共有登記が有利

相続税の土地の評価で小規模宅地の特例というものがあります。自宅敷地については平成27年からは330平方メートル(26年までは240平方メートル)までの土地の評価が80%引きとなる特例です。

区分登記ができるような完全分離型の2世帯住宅の場合、親子で区分登記をしていると、80%引きできる土地は、親の住んでいる建物部分に対応するものだけになってしまいます。子の所有する建物部分に対応する土地は特例の対象になりません。

これが共有登記されていると、子の住んでいる建物部分に対応する土地も含めた全体が80%引きとなるのです。二世帯住宅で区分登記されている方は、今からでも共有登記にすることができますので、当事務所にご相談ください。

9.契約日と引き渡し日(登記日)

不動産の取引では、まず売買契約をして、その後数か月の内に引き渡しをして同日登記申請を行うのが通例です。したがって売買契約日と引き渡し日(登記日)はある程度の間隔が開いています。

譲渡所得の申告では、不動産の譲渡日について、売買契約日と引き渡し日のいずれかを選択することができます。譲渡所得では、5年や10年といった不動産の所有期間によって税率が異なりますので、取得の日と売却の日は、契約日と引き渡し日のいずれか有利な方を選択しましょう。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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