週刊税務調査日記

思いも寄らない調査-パート2 (3)

第86号 2003/11/10

次に調査官は、別の問題を提起してきました。

●税務署

「経理担当者の机の中から職人に対して、年末に外注費と一緒に支給した餅代のリストが見つかりました」

■会計事務所

「餅代?」

●税務署

「そうです餅代、つまり年末の一時金のことです」

「先生、取引先に餅代をあげたら交際費ではないですかね?」

■会計事務所

「んん・・・・」

会社には、ほぼ専属の職人が大勢います。

年末になって、従業員の賞与と同じような感覚で餅代を職人に支給したのでしょう。

でもこれが果たして交際費になるでしょうか?

税法では「交際費とは、法人が、その得意先、仕入先その他事業関係者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義しています。

餅代は確かに、事業関係者に対する支払ではありますが、接待、供応、慰安、贈答に該当するのでしょうか?

接待・・・人をもてなすこと

供応・・・酒食をふるまい、もてなすこと

慰安・・・なぐさめて心を安んずること

贈答・・・送ることとお返しをすること

これらに該当すれば、確かに交際費かもしれません。

しかし、ここは踏ん張りどころです。

前回の脱税から、まるっきり心を入れ替えた社長に対しても、ここは頑張らないといけないところです。

こちらも応戦します。

■会計事務所

「この餅代とされるお金は、一年間安い単価で一生懸命に働いてくれた職人に対する労働の対価です」

「ですから、交際費には該当しません」

●税務署

「餅代ですよ」

「このお金で正月の酒や餅を買ってくれという意味でしょう」

「そうしたら、やはり交際費ということになりませんか?」

■会計事務所

敵もなかなか理論的に言ってきます。

しかし、負けていられません。

              To be continued 

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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