週刊節税教室

減価償却が変わりました(5)

法人税、所得税
第282号 2007/6/11

☆質問

「先週は、減価償却方法届出についての説明でした」

「他に減価償却関連で変更になった点はありますか?」

★回答

「資本的支出に関して改正がありました」

☆質問

「資本的支出って何ですか?」

★回答

「資本的支出とは、今ある減価償却資産の耐用年数を長くしたり、価値

を高めるような支出を言います」

「そうでない支出は修繕費となります」

☆質問

「資本的支出だと、税務上どのような扱いになるのですか?」

★回答

「減価償却資産として資産計上することになります」

☆質問

「損金として落とせないということか・・・」

「この資本的支出にどのような改正があったのですか?」

★回答

「今までは、たとえば自社ビルに浴室を100万円かけて作った場合、建

物の取得価額にその100万円を加算して、減価償却を行っていました」

「ところが、4月1日以降の資本的支出からは、原則としてその100万円

は、新たに取得した減価償却資産として、従来のビルとは別に減価償却

をすることになりました」

☆質問

「は~そうなんですか」

「原則と言うからには例外もあるのですね?」

★回答

「あります」

「平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出をした

場合には、従来どおり、資本的支出を行った既存の減価償却資産の取

得価額に、その資本的支出の金額を加算することができます」

「つまり、建物の取得価額に100万円を加算することができるということ

です」

☆質問

「なるほど」

「他にはありますか?」

★回答

「平成19年4月1日以後取得した減価償却資産に対してする資本的支

出については2つの特例があります」

☆質問

「まず1つ目を説明してください」

★回答

「既存の減価償却資産と資本的支出の両方とも定率法を採用している

ことが条件で、次のような取り扱いが認められています」

「既存の減価償却資産が500万円で資本的支出が100万円とすると、

資本的支出をした事業年度は100万円を個別に定率法で減価償却して

、翌事業年度においては既存の減価償却資産の帳簿価額500万円と資

本的支出100万円の合計額を取得価額として減価償却をすることができ

ます」

☆質問

「2つ目は?」

★回答

「事業年度内に2回以上の資本的支出をした場合の特例です」

「既存の減価償却資産が500万円で同一事業年度内に100万円と50万円

の資本的支出をした場合を例にします」

「100万円と50万円の資本的支出は、別々に定率法を採用して支出事業年

度の減価償却をします」

「そして、翌事業年度においては、100万円と50万円の帳簿価額の合計額を

取得価額として減価償却をすることができるのです」

「つまり、支出事業年度は100万円と50万円とを別々に定率法で減価償却し、

翌事業年度以降は、両者を合計して減価償却をすることもできるということで

す」

です」

☆質問

「なるほど、選択ができるということですね」

「今回の改正で節税になることはありますか?」

★回答

「平成19年4月1日以後取得した減価償却資産については、定率法の償

却率がはじめは多く減価償却できるように変更になっています」

「したがって、平成19年4月1日より前からある減価償却資産に対して、

4月1日以降行った資本的支出については、既存のものとは別個に新定率

法を適用した方が、早期に償却額を多く計上できますのでお得といえます」

「また、資本的支出に関しては、将来その部分を除却する場合には、手間

はかかりますが個別に減価償却しておいた方が、除却損の計上が容易に

行えますので、有利といえます」

なお、アトラスNEWSでは、税金の最新情報を提供しています。

今月は「減価償却が変わりました 」と「従業員を雇用したら何をする?」を解説をしています。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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