週刊節税教室

税制改正大綱で大変だ!

法人税・所得税
第211号 2005/12/19

☆質問

「15日に税制改正大綱が発表されました」

「増税と言われていますが、我々中小企業に影響のある改正はありまし

たか?」

★回答

「あります」

「家族で会社を経営している同族会社にとって、かなり影響のある改正

が発表されたのです」

「新聞では取り上げられていませんでしたが、事務所では15日の夜は

大騒ぎだった程です」

☆質問

「どんな改正なのですか?」

★回答

「同族会社の役員報酬に関する改正です」

「一定の条件に当てはまる場合、会社オーナー経営者の役員報酬にか

かる給与所得控除相当額を法人の損金としないとする改正です」

☆質問

「給与所得控除相当額って何ですか?」

★回答

「簡単な例で説明しましょう」

「役員報酬を計上する前の法人の利益が1,000万円とします」

「そこで、役員報酬を年額900万円計上したとします」

「法人では役員報酬という経費が900万円計上され、利益は100万円

になります」

「役員報酬は役員個人の給与所得となり、所得税・住民税が課税され

ます」

「会社の利益が900万円減って、個人の所得が同額増えるのであれば

税金の損得はあまりないのですが、そうではないのです」

☆質問

「へ~ そうなんですか?」

★回答

「法人の利益は900万円減りますが、個人の所得は685万円しか増え

ないのです」

☆質問

「何でですか?」

★回答

「900万円の役員報酬から給与所得控除215万円が差し引かれて給

与所得は計算されているのです」

☆質問

「なるほど」

「そんなに給与だと給与所得控除があるんですね・・・」

「法人で利益を出して税金を払うより、役員報酬を計上して法人の利

益を少なくし、給与所得控除で圧縮された個人の税金を払う方が得

だということですね?」

★回答

「そのとおりです」

「これが、法人での節税の基本スキームなのですが、この節税策を

封じようとするのが、今回の改正です」

「個人の税金の計算では役員報酬から控除できる給与所得控除を、

法人の税金の計算では逆に法人の利益にプラスするというものです」

☆質問

「完全な節税封じですね?」

★回答

「そのとおりです」

「来年5月の新会社法施行により、法人の設立が増加することを見

込んだ、法人を利用した節税封じといったところです」

「この改正の適用時期は明示されていませんが、同族会社にとって

は影響大ですね」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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