週刊節税教室

離婚に伴う税金 その3

所得税
第46号 2002/8/12

☆質問

『妻と離婚するにあたって、財産分与で自宅を渡すことになりました。

タダで妻に自宅を渡しても「時価で売ったことになる」ということは、分かりました。

具体的に教えてください。』

★回答

まず、売却益が出る場合です。

購入価額2千万円の自宅で、現在の時価が4千万円とします。

売却益は2千万円(建物の減価償却は無視します)です。

ここで重要なのは、財産分与を離婚が成立する前にするか、後にするかによって税金の扱いが違います。

具体的には、財産分与に伴う不動産の所有権移転の登記の日が、離婚届提出の日の前か後かによります。

☆質問

『財産分与が離婚成立前であると、どうなるのですか?』

★回答

自宅の所有期間が5年超であれば、売却益2千万円に所得税・住民税で26%の税金がかかり、100万円の特別控除が受けられます。494万円の税金です。

自宅の所有期間が5年以下であれば、売却益2千万円に所得税・住民税で52%の税金がかかります。1,040万円の税金です。

☆質問

『財産分与が離婚成立後であると、どうなるのですか?』

★回答

離婚成立後に財産分与をすると、自宅を自分の妻に売ったことになりません。

つまり、赤の他人に自宅を売却したことになります。

そうすると、居住用財産の特例を受けることができます。

☆質問

『自分の妻に自宅を売っても居住用財産の特例を受けられないということですね?』

★回答

そのとおりです。

居住用財産の特例は、身内に売却すると受けられません。

設例の場合は、居住用財産を売却した場合の特例である3千万円控除により、納税額はゼロになります。

また、自宅の所有期間が10年超の場合には、売却益にかかる税率が所得税と住民税あわせて14%(売却益6千万円以下)、20%(売却益6千万超)を適用することができます。この軽減税率の適用も、離婚後に財産分与することが要件となります。

☆質問

『売却益がでる場合は、離婚成立後に財産分与する必要があるということがよく分かりました。では、売却損がでる場合の税金はどうなりますか?』

★回答

2千万円で買った自宅の財産分与時の時価が1千万円であると、1千万円の売却損が出ます。

この売却損は、あなたの給与所得から引くことができます。

あなたの給与所得が1千万円以下であれば、所得税と住民税は一切かかりません。

☆質問

『長野に別荘を持っているのですが、時価が相当下がっていますので、これを財産分与で妻に渡せば売却損で給与所得から引けますか?』

★回答

別荘は「生活に通常必要でない資産」であることから、売却損は給与所得から引くことはできません。

離婚するのにも税金のことを十分に考えないと、「泣きっ面に蜂」となってしまいます。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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