週刊節税教室

給与所得控除を利用する(1)

所得税
第30号 2002/4/22

☆質問

    『最近新聞で政府の税制調査会がサラリーマンの給与所得計算上における

   給与所得控除を見直して縮小するなどと書かれていますが、意味が分かり

   ません』

 ★回答

   個人で商売をしている個人事業者は、収入から実際にかかった経費を差し

   引いて申告しています。

   これに対してサラリーマンは給与収入から自動的にかかってもいない経費、

   すなわち給与所得控除という国が定めた給与所得者の経費を引いて税金

   計算されているのです。

☆質問

   『実際に私は年間800万円の給料をもらっていますが、給与所得控除は

    いくら引かれているのでしょうか?』

★回答

   年収800万円の給与ですと、ちょうど200万円の給与所得控除が認めら

   れています。

   年間200万円も自分の仕事のために自腹を切って皆さん払っていますか?

   仕事に必要なものはほとんど会社に用意されていませんか?

☆質問

  『なるほど、通勤交通費や通信費、文具、家賃なんかはすべて会社が払っ

  ているから、給与所得者が自分で払う経費なんて本代くらいなものかな・・・。

  なんかすごく得している気分になりましたが、この制度を使って節税できな

  いですか?』

★回答 

  この制度を利用した節税はいくつかありますが、個人事業者について今回は

  説明します。

☆質問

  『個人事業者は実際使った経費しか収入から引けないのですよね・・・。

   もしかして、個人事業者が給与をもらって給与所得控除を受けて実際の経

   費と給与に認められている経費を2重取りするというようなことですか?』

★回答 

   そのとおりです。

   売上高1,000万円で実際の経費が400万円の個人事業者の所得は600

   万円です。

          1,000万円-400万円=600万円

   この売上高のうち300万円を給与でもらうと個人事業者の所得は492万円

   となります。

      300万円(給与)-108万円(給与所得控除)

              +700万円(残りの売上)-400万円(経費)

=492万円

  結果として108万円(600万円-492万円)所得が下がります。

  売上を給与としてもらうには、仕事の依頼者との間で雇用契約に準じた仕事

  の内容が必要です。

  たとえば、ある会社の顧問になった場合にはその勤務実態によっては報酬では

  なく、給与で収入をもらった方が節税になるケースがあるのではないでしょうか。

  仕事の実態が雇用契約に準じた内容でないと給与とすることはできませんの

  で注意してください。

  また、給与ですと消費税が請求できません。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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