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定期同額給与

第301号 2019年6月

1.はじめに

役員報酬が、法人の損金に算入されるためには定期同額給与である必要があります(例外として事前確定届出給与、業績連動給与あり)。

定期同額給与とは、1 か月以下の一定期間ごとに、毎回同額を支給する給与のことです。給与の額が月によって異なったり、給与額は同一でも1か月を超える期間での支給、つまり3 か月ごとの支給などでは、給与額の一部または全額が損金に算入されません。

2.役員報酬の改定

役員報酬を損金に算入するためには毎月同額である必要がありますが、税法では「通常改定」「臨時改定」「業績悪化改定」のいずれかに該当すれば、給与額を変更しても法人の損金に算入することができます。

3.通常改定

事業年度開始日から3 か月以内に改定することが通常改定です。3 月決算法人の場合、5 月の株主総会で改定決議をして6 月に改定後の給与を支給するケースが典型です。

このケースでは事業年度開始日から3 か月以内に、改定決議と支給が行われていますが、改定決議を6 月にして改定後の給与の支給を7 月にするケースも、通常改定として損金算入が認められています。

4.臨時改定

役員の職制上の地位の変更などで、役員報酬を改定するやむを得ない事情がある場合は、事業年度開始日から3 か月経過後に定期給与の改定を行っても、定期同額給与と認められます。

改定事由としては、以下のような例示となります。

  • 社長が退任して専務が社長に昇格した場合
  • 合併により役員の職務内容が大幅に変更された場合
  • 常勤役員が非常勤役員になる場合(または、その逆)
  • 病気やケガで療養中の役員の給与を減額する場合
  • 出産のため職務につけない役員の給与を減額する場合
  • 不祥事の処分として役員報酬を一定期間減額する場合

5.業績悪化改定

法人の経営状況が著しく悪化したことなどによって、やむを得ず役員報酬を減額する場合は、事業年度開始から3 か月経過後に定期給与の改定を行っても、定期同額給与と認められます。

改定事由としては、以下のような例示となります。

  • 株主との関係で、業績悪化に対する役員としての責任上、報酬を減額せざるを得ない場合
  • 銀行借入金のリスケ協議において役員報酬を減額せざるを得ない場合
  • 業績悪化に伴う会社の信用維持のため、役員報酬の減額を含む経営計画が策定された場合
  • 主力製品の瑕疵が判明し、今後多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられないことが、客観的に見て明らかである場合
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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