アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

税金が安くなる支払

第230号 2013年7月

1.はじめに

会社経営をするには様々な支払いが必要になります。売上高を生み出す商品の仕入れ、人件費、設備投資など会社を維持して発展させるために必要となる支払いが多々あります。

税法では、国の政策の一環として、会社が事業を営むのに必要な支払いに対して、政策的に税金を安くする施策を講じています。知らないと損をする優遇税制ですので、どのような支払いが対象となるかを説明します。

2.試験研究費の支払い

試験研究費の支払いがあると、その額の12%の税額控除(法人税額の30%が限度)が受けられます(試験研究費には他にも税額控除の制度があります)。

試験研究費とは、「製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明にかかる試験研究のために要する費用で次に掲げるものとされています。

  1. 試験研究を行うために要する原材料費、人件費、経費 人件費は、専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に限られます。
  2. 他の者に委託して試験研究を行う法人のその委託研究費
  3. 技術研究組合法の技術研究組合から賦課され納付する費用

ここでの試験研究費は工学的・自然科学的な研究を意味していますので、人文・社会科学関係の研究は含まれません。以下のような費用は試験研究費に含まれません。

  1. 事務能率・経営組織の改善に要する費用
  2. 販売技術・方法の改良に要する費用
  3. 販路の開拓に要する費用
  4. 単なる製品のデザインを考案するための費用
  5. 既存製品に対する特定の表示の許可申請のために行うデータ集積等の臨床実験のために要する費用

3.エネルギー環境負荷低減設備への支払い

環境にやさしい設備を会社で購入して事業の用に供した場合には、取得価額の30%の特別償却か取得価額の7%の税額控除(法人税額の20%が限度、中小企業のみ)のいずれかを適用することができます。

対象となる設備としては次のようなものがあります。

1. 太陽光発電設備・風力発電設備
  • 取得価額の全額を償却できます。
2. 新エネルギー利用設備等
  • 中小水力発電設備
  • 熱利用設備
  • 雪氷熱利用設備など
3. 熱電併給型動力発生設備
  • コージェネレーション設備のことで、取得価額の全額を償却できます。
4. 二酸化炭素排出抑制設備等
  • ハイブリッド建設機械
  • プラグインハイブリット自動車
  • 電気自動車など
5. エネルギー使用制御装置
  • 測定装置、中継装置、アクチュエーターなど
6. エネルギー使用合理化設備
  • 高断熱窓設備
  • 高効率照明設備等

4.機械、器具備品、ソフト購入の支払い

新品の機械装置や器具備品・ソフトウエア品等を取得して事業の用に供した場合に取得価額の30%の特別償却か取得価額の7%の税額控除(法人税額の20%が限度)を受けることができます。

対象となる資産は以下のとおりです。

1. 機械装置(1台160万円以上のもの)
2. 器具備品(1台120万円以上のもの)
  • 測定工具及び検査工具
  • 電子計算機
  • インターネットに接続されたデジタル複合機
  • 試験又は測定機器
3. ソフトウエア
  • 一つのソフトウエアの取得価額が70万円以上のもの
  • その事業年度において事業の用に供したソフトウエアの取得価額の合計額が70万円以上のもの
複写して販売する原本、開発研究用のもの又はサーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものなどは除かれます。
4. その他
  • 貨物の運送に使われる3.5トン以上の普通自動車
  • 内航海運業の用に供される船舶

5.人件費の支払い

当期末の雇用者の数が前期末の雇用者の数に比して5人以上(中小企業者等は2人以上)増え、かつその増加割合が10%以上の場合には、増加した人数×40万円の税額控除(法人税額の10%、中小企業者等は20%が限度)が受けられます。

雇用者は雇用保険の被保険者である必要があり、役員の親族や使用人兼務役員は除かれます。

また、この制度の適用を受けるには、適用事業年度開始後2か月以内に、雇用促進計画を作成してハローワークに提出する必要があり、更に事業年度終了後2か月以内にハローワークで計画の達成状況の確認を受ける必要があります。

この制度は雇用促進税制というものですが、この制度と選択適用で所得拡大促進税制がスタートしています。

この制度は、以下の3要件を満たせば、給与支給増加額の10%の税額控除(法人税額の10%、中小企業者等は20%が限度)が受けられます。

  1. 給与等支給額が基準事業年度(3月決算の場合は平成25年3月期)から5%以上増加していること
  2. 給与等支給額が前事業年度の額を下回らないこと
  3. 平均給与等支給額(1人当たり月額給与額の平均額)が前事業年度のそれを下回らないこと

6.店舗改修等の設備投資への支払い

中小企業等が認定経営革新等支援機関(アトラスも支援機関になります)の経営改善に関する指導や助言を受けて行う店舗の改修等に伴い、1台30万円以上の器具備品、一つの取得価額が60万円以上の建物付属設備を取得して事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却と取得価額の7%の税額控除(法人税額の20%が限度)を選択適用できる制度です。

対象となる事業者は、卸売業、小売業、サービス業、農林水産業になります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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