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相続放棄

第205_1号 2011年6月

1.はじめに

東日本大震災に関連して、「相続放棄」の期限延長が望まれています。震災で多くの方が亡くなられました。相続は、亡くなられた日から始まります。プラスの財産を残して亡くなられた場合であれば単純に相続をすれば問題ありませんが、借入金といったマイナスの財産が多い場合は、単純に相続できません。

2.相続放棄をする

借入金が多額にあり、プラスの財産である現預金は少し、ローンで買った家は流され、その土地にはもう住むことができないとなれば、相続すると借入金の返済だけが残ってしまいます。このようの場合に、相続放棄をするのです。プラスの財産もマイナスの財産も一切相続人が引き継がない手続です。

3.期限があります

相続放棄をするには「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に住所地の家庭裁判所で手続をしなければなりません。この期限を過ぎてしまうと相続放棄ができなくなってしまいます。期限延長の手続も別途ありますが、期限自体を被災者のために延長することは良いことですね。

4.相続人が替わっていきます

夫が亡くなり、妻と子がいる場合、妻と子が相続人になります。しかし、夫の借金が多額で妻と子が相続放棄をすると、亡き夫の両親が存命であれば、両親が相続人になります。このままでは年老いた両親が自分の子供の借金を相続することになります。

そこで両親も相続放棄をします。すると今度は、亡き夫の兄弟姉妹に相続権は移行し、兄弟姉妹が相続人になります。もし、兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は、その子が相続人になります。つまり、亡き夫の甥姪が相続人になることもあり得るのです。当然兄弟姉妹や相続人になった甥姪も相続放棄の手続をとることになります。

6.生命保険金はもらえます

亡き夫に掛けていた生命保険金は、受取人が妻や子供になっていれば、妻や子供が相続放棄をしても生命保険金をもらえます。

保険金請求権は相続財産に含まれず、相続人が保険契約上の権利を取得するものとされているからです。

7.連帯保証は要注意

亡き夫が自分で事業をしているような場合は、会社の借入金の連帯保証人になっているかどうかを相続に当たって銀行に確認する必要があります。

亡き夫は個人的に借入金がなかったので、妻と子が相続したところ、会社の借入金の連帯保証を夫がしていると、その連帯保証は妻と子供に自動的に引き継がれてしまいます。将来、会社が借入金を返済できないと、連帯保証人である妻と子に銀行は返済を迫ってくることになるのです。

夫が事業をしていなくても、友人の借入金の連帯保証をしている場合も同様です。連帯保証は目に見えにくいものですから相続に当たっては十分注意する必要があります。

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