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第二の開国、改正外為法

第049_2号 1998年2月

1.はじめに

日本経済の悪化は、現在、深刻な状況におちいっています。消費の低迷、貸し渋りによる倒産、株安、低金利、失業率の上昇、そのマイナス局面は数え上げればきりがありません。

政府は、外国からの圧力もあって、ようやく大規模な経済対策を行おうとするようですが、国民としては、それで何とかなると期待する者はあまりいないようです。

しかし、今年は日本経済に大きな変化をもたらす要因があります。金融ビックバンの先頭を切った今年4月からの改正外為法の施行です。これは明治維新以来の黒船の来襲、第二の開国に匹敵すると言われています。それが吉と出るか、凶と出るかはまだ誰も正確には予測できません。しかし、日本の経済のあり方が劇的に変化していくことはまちがいないようです。

2.改正外為法で何が変わるか

① 海外預金の自由化

外国の銀行に預金口座を開設し、ドル建てでも円建てでも自由に預金ができます。日本の金利は現在、超低金利の状態が長期間続いています。1年もの定期預金で0.25%くらいです。それが外貨定期預金だと4~5%の利率です。実に20倍近く差があるわけです。

ただし、外貨預金の場合、為替リスクが伴います。利息が良くても、為替差損で元本割れということもありえます。また、逆に為替差益が出れば、利息プラス為替差益ということで、さらなる高利回りを獲得できる可能性もあるわけです。

今まで円安とか円高とかあまり庶民にとっては身近とは言えないことが 、大きな関心事になるでしょう。

② 両替業務の自由化

誰でも自由に両替業務ができるようになります。百貨店、スーパー、コンビニなどで円とドルの交換できるコーナーがつくられるでしょう。

両替手数料が競争原理により必然的に安くなります。すでに自動両替機も開発されていて、街のあちこちに設置される日も遠くないでしょう。

ただ、にせ札の問題も起きてきます。にせ札を鑑別する機械も必要になってきます。

③ 外貨建て取引の自由化

国内でドルを使って自由に買い物ができるようになります。

今まで、内外価格差ということが言われてきました。外国で安い商品が、日本国内だと関税やら手数料やらで、かなり高くなるのです。しかし、直接、ドルで買い物ができるのであれば、この内外の価格差もちぢまる傾向になるでしょう。

3.自己責任の時代

私たちの財布の中にドル札が入っているのがあたりまえの時代が来るかもしれません。

私たちは、これから自分の資産を円でもドルでも、あるいは他の外貨でも運用していけるのですが、その際、ハイリスク・ハイリターンの原則を忘れてはいけません。一見有利なものには必ずそれ相応のリスクが伴います。それを見極めて、自己責任を前提に行動していかなくてはなりません。


税金ワンポイント(耐用年数の短縮)

今回の税制改正で増税ではなく減税として、建物の耐用年数の短縮があげられます。これは、新規取得の建物の減価償却方法として節税効果の大きい定率法の採用は認めず、定額法のみの適用とされたことの見返りとして建物の耐用年数の短縮が行われました。

確かに新規取得建物については耐用年数が短縮されても定額法によることから 税額は改正前に定率法を採用していた場合と大差ありません。しかし短縮された耐用年数は既存の建物にも適用されるため、この場合は耐用年数が短くなった分だけ減税になります。

65年→50年、60年→47年、45年→38年、24年→22年、22年→20年 が主なものです。適用は10年4月1日以降開始事業年度からで、3月決算はこの4月から、9月決算は10月1日からとなります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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