週刊なるほど!消費税

納税義務(法人成り:3)

第242号 2007/10/15

★【先生】

前々回から、法人成りした場合の納税義務について、事例をあげて見ています。

☆【生徒】

 前回も前々回も、新たに事業を開始した個人事業者が法人成りした場合について

の事例でしたよね。

★【先生】

 個人事業者と法人とは、人格を切り離して考える。新たに設立した法人の納税義務

の判定には、個人事業者の時の課税売上高は関係ない。だから法人成りをうまく

活用すれば、消費税の節税ができる、ということでした。

 今回も引き続き、法人成りした場合の納税義務について、例をあげて見ていきます。

 下記の場合における、平成16年から平成20年までの各事業年度について、納税

義務はどうなりますか?

・平成14年以前から継続して事業をしている個人事業者である

・平成14年中の課税売上高 : 3,100万円

・平成15年中の課税売上高 : 1,850万円

・平成16年中の課税売上高 : 990万円

・平成17年中の課税売上高 : 1,900万円

・平成18年中の課税売上高 : 3,300万円

・平成19年中の課税売上高(1月1日から11月4日まで) : 3,000万円

・平成19年11月5日に資本金1万円で法人成りした

・1期(平成19年11月5日~平成20年10月31日)の課税売上高 : 3,800万円

☆【生徒】

 平成14年以前から継続して事業を行っている。平成19年11月5日に法人成り

した。

・・・中途半端な日に法人成りしていますね・・・

★【先生】

 別に法人を設立する日を、必ずキリの良い日にしなければならないということはあり

ません。

☆【生徒】

資本金は1万円。これもまた、ずいぶんと少ないですね。

★【先生】

 それも別に、今は法律が改正されたので、資本金の額はいくら以上にしなければなら

ない、という決まりはありません。

☆【生徒】

事業年度については、第1期は、設立の日が中途半端だから丸一年とはならず、

10月31日まで。あとは各事業年度における課税売上高が示されている。・・・

すごい勢いのV字回復ですね・・・

★【先生】

 大きなところでは、継続して事業を行っていた個人事業者が法人成りした、という所

が前回と異なっています。

 ☆【生徒】

 平成16年は、・・・『納税義務 (個人事業者 : 3)』のところでやりま

した!個人事業者の納税義務の判定は、あくまでもその年の前々年の課税売上高で

判定する。その年の課税売上高が超えていても、超えていなくても、その年の納税

義務には影響しない!

平成14年の課税売上高が1,000万円を超えているので、納税義務はあります!

 平成17年は、これは普通に前々年の平成15年の課税売上高から考えて1,000

万円を超えているので、納税義務はある。

 平成18年は、・・・『納税義務 (個人事業者 : 4)』のところでやりま

した!その年の課税売上高が1,000万円を超えていても、前々年の平成16年の

課税売上高が990万円で1,000万円以下だから、納税義務はありません!

 平成19年は・・・前回と同じで、個人事業者と法人との人格を切り離して考え

ます。

平成19年11月4日までの個人事業者のときの納税義務は、平成17年で判断。平

成17年度の課税売上高は1,900万円で1,000万円を超えているから納税

義務がある!

 法人になってからは、新設法人には前々期がない。資本金も1万円で、1,000

万円に満たないから納税義務はありません!

★【先生】

 その通りです。ちなみにこの事業者の場合には、第2期も免税事業者となります。

 このように、継続して事業を行っている個人事業者であっても、わずかな資本金を

準備して法人成りすることにより、法人成りしたときから原則2年間、納税義務の免

除を受けることで、消費税を節税をすることができるのです。

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