【先生】
前回はみなし譲渡の対価の額について見ました。
みなし譲渡は、原則としてそのときの時価で取引があったものと
みなすものですので、例えば会社の役員に無償で100万の絵画
を贈与した場合には、100万円で売ったのと同じこととされ、
100万円×5%=5万円
5万円の消費税を納める必要があります。
【生徒】
贈与だからお金はもらってないんですよね。なのに税金だけは
払う必要があるんですか・・・
税金分損した感じ・・・
【先生】
そこで何とかみなし譲渡にあたらないようにしようと考える人が
でてきます。つまり、
「1円で売ったことにすれば、贈与じゃなくて売買だから、みなし
譲渡にはあたらないはずだ」
【生徒】
なるほど。1円でも売ったことには変わりないから贈与ではない
ですよね。
【先生】
そんなときのために別の規定が設けられています。それが低額
譲渡です。
これは、資産をその時価よりも著しく低い対価で譲渡した場合に
は、その譲渡した金額ではなく、時価を対価の額とするというもの
です。
但し低額譲渡の規定は法人が役員に譲渡した場合にしか適用が
ありません。
【生徒】
でも著しく低い対価って、一体いくらなんですか?
【先生】
通常は時価の50%に満たない場合を言います。
ただその資産が棚卸資産の場合には、みなし譲渡の時と同様
に規定があります。
棚卸資産を役員に譲渡した場合には、その金額が販売価格の
50%以上であり、かつ、仕入金額以上の時には低額譲渡には
該当しないというものです。
【生徒】
会社に飾ってある100万円の絵画と、店頭で売っている100
万円の商品ならどう違うんですか?
【先生】
時価100万円の絵画の場合には、その50%以上の金額で
譲渡した場合には低額譲渡にはなりません。
つまり、49万円で役員に売った時には、時価の100万円が
対価の額になり、50万円で売った時にはその50万円が対価
の額になります。
一方販売価格が100万円の商品の場合、仕入値が70万円
だとすると、時価の50%である50万円で売ったとしても、仕入
値の70万円未満ですので、低額譲渡となって100万円を対価
の額とすることになります。
【生徒】
なんか複雑ですね。
社内販売で役員の人に仕入値以下で売ったりしたら、全部
売値を対価の額にないといけないんですか?
【先生】
社内販売ですと、全社一律とか勤続年数に応じて何割といっ
たように決められている場合が多いと思います。
社内の人全員に同じ規定の値引率が使われるような時には、
低額譲渡としなくて問題ないでしょう。
ただ役員のみ有利な値引率になっているような場合には、低
額譲渡となってしまう恐れがあります。
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