【先生】
さて今回は、資産の譲渡等に含まれる取引でも一番問題となった
『みなし譲渡』の対価の額が一体いくらになるのか見ていきましょう。
その前にまずみなし譲渡の復習を。みなし譲渡がどのような内容
だったか覚えていますか?
【生徒】
本来譲渡にはあたらないのに、譲渡したものとみなしてしまおうと
いう規定です。
【先生】
では具体的にはどうでしょうか?個人事業者と法人ではそれぞれ
異なる規定になっていました。
【生徒】
確か個人事業者は、商品や事業で使っているものを家事用で使っ
たりする自家消費の場合で、法人は、会社の資産をその法人の役員
に贈与した場合です。
【先生】
そうですね。
付け加えると、自家消費の場合には一時的な利用は含まれない
ですし、法人の場合には無償の資産の貸付や役務の提供は含まれ
ません。
ではこのみなし譲渡の対価の額はいくらになるでしょうか?
【生徒】
・・・タダの場合いくらになるかってことですよね・・・ちょっと難しい
です。
【先生】
自家消費の場合には、自家消費したときにおけるその自家消費
した資産の価額に相当する金額。
法人の場合には、役員に贈与したときにおけるその贈与した資
産の価額に相当する金額。
つまり、みなし譲渡をしたときの、その資産の時価ということです。
【生徒】
時価ですか・・・寿司屋ではあまり聞きたくない言葉ですね・・・
【先生】
小売業なら一番分かりやすいでしょう。店頭に並んでいる商品に
ついている値札の金額が対価の額になります。
【生徒】
100円のものを自分で使ったら100円の売上になりますよって
ことですね。
【先生】
但し、商品のような棚卸資産についてのみなし譲渡には、事業者
が有利になる規定が設けられています。
自家消費や役員への贈与が棚卸資産だった場合、その棚卸資産
の課税仕入れの金額以上の金額で、かつ、通常の販売価格の50%
以上の金額を対価の額として消費税を計算し、申告すれば、それを
認めるというものです。
【生徒】
もうちょっと具体的に教えてもらえますか?
【先生】
6,000円で仕入れた商品を1万円で売っているとします。この商品
を会社の役員に贈与しました。
この時、仕入値である6,000円以上であり、かつ通常の販売価格の
50%=5,000円以上ということですので、対価の額を6,000円として
計上してOKということです。
【生徒】
対価が低くなるということは、それを元に計算する消費税の金額も
少なくなるんですね。
【先生】
そうです。
仕入値と販売価格の50%とを比べて、どちらか高い金額が、対価
の額の最低ラインということになります。
ただこの規定は棚卸資産についてのみの規定ですので、それ以外
の資産の場合には原則どおり時価が対価の額となります。
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