納税者宅に直接おじゃましてする調査は終了しました。
故人が代表者として経営していた同族会社についてもいくつかの確認事項があるということで、後日直接調査官が訪問するとのことでした。
ここまでの相続税の調査では、特に大きな問題はありません。
あとは、税務署から連絡があり、何らかの調査結果を知らせてくるはずです。
およそ3週間後に事務所に連絡がありました。
●税務署
「一応、調査の結果がまとまりましたので、署までご足労願いたいのですが?」
■会計事務所
「了解いたしました。明日お伺いいたします。」
こうして翌日税務署に行きました。
●税務署
「ご足労いただきましてありがとうございました」
「こちらでまとめた財産の計上漏れかと思われるものはこれになります」
と言って1枚の紙を渡されました。
財産の種類とその名義人、及び財産の評価額がリストアップされています。
そしてその評価額の合計額に自然と目が行きました。
それを見て思わず「えっ」と声が出てしまいました。
とんでもない額が記されています。
なんと5千万円です。
つまり、5千万円の相続財産が計上漏れになっているという税務署の指摘です。
「えぇ、何でこんな巨額な財産が漏れていたというのですか?」
●税務署
「基本的に、故人の配偶者であるお母さん名義の預金や投資信託などの財産は、名義上お母さんになっているだけであって、実質は故人であるお父さんの財産であると判断しました」
「その根拠としましては、お母さんは結婚してから働いたことがなく、したがって所得も当然ないことになります」
「それと、銀行や証券会社に行って実際に確認してきたのですが、預け入れ書などの名義は確かにお母さんの名義ですが、筆跡はすべてお父さんのものであったのです」
「したがって、過去に遡って資金の流れを調査した結果、このような財産の計上漏れとなったわけです」
■会計事務所
「配偶者に所得がない以上、配偶者が数千万円も財産を形成できるはずないということですか?」
●税務署
「そういうことです」とキッパリと言い切ります。
■会計事務所
「しかし、いくら配偶者に所得がないからといって、生計のためのお金を故人から配偶者に渡していることも事実です」
「また、これだけ婚姻期間が長ければ夫婦共有の財産もしかるべき額あって当然だと思うのですが」
●税務署
「はい、その点も十分考慮した結果がお渡ししたリストです」
自信満々に言い切ります。
■会計事務所
「このリスト作成の元になった資料はありますか?」
●税務署
「ええ、これです」と黒紐で綴じられた膨大な資料をテーブルにドスンと置きました」
「何なら1枚1枚確認されますか?」
To be continued
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