週刊節税教室

自社株を自分の会社に売却する(3)

相続税、所得税
第194号 2005/8/22

相続で取得した自社の株式を、自分の会社に売却した場合の税金の扱い

について前回説明しました。

☆質問

「特別扱いで株式の譲渡所得になるということでした」

★回答

「そうでしたね」

「株式の譲渡所得になると20%の税率で、他の所得とは合算されない分

離課税の扱いになるのですが、更に税金が安くなる制度を使えるのです」

☆質問

「更に税金が安くなる制度があるのですか?」

★回答

「相続税の取得費加算の特例というものです」

☆質問

「どのような特例なのですか?」

★回答

「前回までの設例では、1株50,000円で取得した株式を80,000円で売却

して30,000円の売却益が出るというものでした」

「50,000円が売却した株式の取得費と言います」

「この特例は、相続税を支払って取得した50,000円の株式に、支払った

相続税の一部を所得費に加算して、株の譲渡所得を計算できるというも

のです」

「つまり、「80,000円(売却額)-50,000円-取得費加算相続税」で株式

の譲渡所得を計算できるのです」

☆質問

「そうすると、売却益は30,000円から取得費加算相続税額を引いた額だ

け少なくなるということですね?」

★回答

「そのとおりです」

「では、その取得費加算相続税の額はどのように計算されるのですか?」

☆質問

「相続税の額が仮に600,000円、相続した財産は6,000,000円、その内自

社株は100株で5,000,000円とします」

「取得費加算相続税の額は、

   600,000円×5,000,000円÷6,000,000円=500,000円

                   と計算されます」

つまり、支払った相続税の内、相続した財産のうちに占める売却した自社

株の金額の割合の額だけ株式の取得費に加算されるのです。

☆質問

「すると、自社株を相続後100株売却したとすると、株式の譲渡における

売却益の計算はどのようになりますか?」

★回答

「8,000,000円-5,000,000円-500,000円=2,500,000円と計算されます」

「取得費加算の特例がないと、8,000,000円-5,000,000円の3,000,000円

となりますから、500,000円売却益が少なくなるわけです」

☆質問

「税率が20%ですから、500,000円×20%=100,000円税金が安くなると

いうことですね?」

★回答

「そのとおりです」

「なお、この特例を受けるには、相続開始の翌日から相続税の申告期

限後3年以内までに譲渡することが必要です」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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