週刊節税教室

自社株を自分の会社に売却する(2)

相続税、所得税
第193号 2005/8/15

☆質問

『前回は私が生きているうちに、私が持っている自社の株式を自

分の会社に買い取ってもらう場合の税金の説明でした』

『では、私が死んで自分の会社の株式が相続財産となり、それを

子供たちが会社に売却した場合はどうなるのですか?』

★回答

この場合の税金の扱いは、前回の生前の自己株式の売却とは大き

く異なります。

☆質問

『前回の例では、私が50,000円で手にした株式を会社に80,000円

で売却すると、差額の30,000円がみなし配当として、配当所得に

なりました』

『相続で自己株を売却した場合は、これとは違ってくるというこ

とですね?』

★回答

そうですね。

差額の30,000円は、株式の譲渡益とされます。

☆質問

『配当所得ではなくて、今度は株式の譲渡所得ですか?』

★回答

そうなんです、非常にややっこしいのですが、相続で自己株式を

発行会社に売った場合は、株式の譲渡所得となるのです。

☆質問

『30,000円に何%の税金がかかるのですか?』

★回答

20%の税金がかかります。

国税である所得税が15%、地方税である住民税が5%かかります。

☆質問

『配当所得の場合に比べてどうなんですか?』

★回答

配当所得は他の所得と合算されて課税される総合課税でしたが、

株式の譲渡所得は他の所得とは合算されない分離課税です。

☆質問

『他の所得とは関係なく、譲渡益の20%の税金だけ支払えばよい

ということですね?』

★回答

そのとおりです。

株式公開されていない中小企業の株式は、取引所で売却できるわ

けではなく、相続財産とされても相続税の納税が大変になるケー

スがよくあります。

そのような場合に、自分の会社に売却して換金できれば、相続税

の納税もスムーズにできるというわけです。

平成16年度の税制改正で手当てされました。

この制度を適用する要件は、非上場株式等を相続又は遺贈で取得

した個人で、かつ相続税の納税があり、相続開始の翌日から相続

税の申告期限後3年以内までに譲渡することです。

なお、この譲渡には相続税の所得費加算の特例の適用もあります

ので、次回説明いたします。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

無断転用・転載を禁止します。

本メールマガジンに掲載されている著作物に対する以下の行為は、著作権法上禁止されており、著作権侵害になります。

  • ○著作物を、私的利用の範囲を超えて権利者の許可なく複製する行為
  • ○著作物を、インターネット上で公衆が取得可能な状態にする行為
  • ○著作物の全部もしくは一部を権利者の許可なく改変する行為