☆質問
『確か年末に株式公開をしていない中堅規模の会社オーナーの相続税の
調査で、自社株の申告漏れがあり億単位の追徴税額を指摘されたとの新
聞記事がありましたが?』
★回答
私もその記事は読みました。
国税局の大物OB税理士が指導した自社株に対する相続税対策です。
☆質問
『具体的に教えてください』
★回答
死亡した社長が生前所有していた自社の株式を、生前に従業員持株会を
作ってそこに売却していました。
株式を売却するには時価でする必要があります。
株式を公開している会社であれば取引所の株価を用いますが、公開して
いない場合には相続税法に定める株価算定方式により求めた株価を時価
として取引をします。
この税法で定められている株価算定方式は、株式を買い取る者が譲渡す
る側の社長一族と関係するか、しないかにより大きく違ってきます。
☆質問
『社長一族と関係のある者が買い取る場合はどのような株価の算定方式
となるのですか?』
★回答
社長一族と関係のある者が買い取るということは、会社の支配権の獲得を
目的とした株式の譲渡と考えます。
したがって、会社の有する財産の価値や、同じ業種で株式公開されている
会社の株価を考慮して、会社そのものの価値を反映した株価算定方式とな
っています。
☆質問
『すると儲かっている会社や価値のある不動産を所有している会社の株価は
当然高くなるということですね?』
★回答
そのとおりです。
☆質問
『では、社長一族と関係ない者が買い取った場合はどうなるのですか?』
★回答
社長一族と関係ない者が証券取引所で売買もできない会社の株を買うと
いうことは、株を所有することにより配当金をもらうことが目的であると考え
ます。
そこで税法ではその会社の過去2年間における配当金額をもって株価を
算定します。
☆質問
『そうすると配当をしていない会社や配当をしていても少額な配当であると
算定される株価は低くなるのですか?』
★回答
そのとおりです。
配当をしていなければ額面金額の2分の1の金額が株価となることもある
のです。
従業員持株会は社長一族と関係ないものに該当し、この配当を基に算定
した極端に安い株価でもって社長の株式を大量に従業員持株会に売却し
たのです。
こうして社長の持株が安く売却されれば、社長が死亡したときの相続財産
は当然減ることになり、納める相続税も減少することになるのです。
これが、相続税対策の内容です。
☆質問
『これでなぜ税務調査で問題となったのですか?』
★回答
従業員持株会の実態がないと税務署が判断したからでしょう。
従業員持株会がチャンと普通に機能していれば、問題ない取引であると
言えます。
大量の自社株式を持株会に売却したり、売却時に社長が重病で入院して
いたり、従業員が支払った金銭が持株会の拠出金であることの説明がな
かったり、持株会を実質的に社長一族が支配している状況であったのでは
ないでしょうか。
おそらくミエミエの相続税を減少するだけの対策であったのでしょう。
大物OB税理士だからといって、何でも通るという訳にはいかなかったよう
ですね。
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