週刊節税教室

上場株式の贈与(2)

所得税・贈与税
第53号 2002/9/30

☆質問

『上場株式を息子に贈与する場合、来年の新証券税制で注意することはありますか?』

★回答

まず、親から子に贈与した上場株式を今年売る場合と、来年売る場合の違いについて説明します。

例)親が20年前に200円で買った日立製作所の株式1万株を今年1株600円で

  贈与した。

 贈与でもらった株式の取得日と取得価額は、贈与者である親が取得した20年前の取得日とその時の取得価額200円となります。  

(今年売却・・・1株700円で1万株売却)

 (1)申告分離課税(売値と取得価額の差額に税率がかかる方法)

   (700円-200円)×10,000株×26%=1,300,000円

(2)源泉分離課税(売値に1.05%を掛ける方法)

   700円×10,000株×1.05%=73,500円

 今年売るなら、(2)の源泉分離課税が有利になります。

(来年売却・・・1株700円で1万株売却)

 申告分離課税(売値と取得価額の差額に税率がかかる方法、特例で税率は

          10%となる)

   (700円-200円)×10,000株×10%=500,000円

 予定では来年から源泉分離課税が廃止され、申告分離課税だけとなります

が、1年を超えて保有した上場株式については3年間は税率が10%(本来は20%)に引き下げられています。贈与により取得日は親から引き継がれるため、1年超保有の要件も満たします。

「みなし取得費特例」を適用すると・・・

みなし取得費特例とは、「去年の9月30日以前に取得した上場株式の取得価額を去年の10月1日の終値の80%にできる」という特例です。

去年の10月1日の日立製作所の終値の80%は638円ですので、この特例を使うと次のようになります。

   (700円-638円)×10,000株×10%=62,000円

贈与により取得日は親から引き継がれるため、去年の9月30日以前の取得の要件も満たし、638円を売値である700円から引いて税率を掛けることができるのです。

税金のいろいろな計算の仕方があり、分かりにくいかもしれませんが、評判どおりの超複雑税制であることは、理解いただけたと思います。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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