★【先生】
引き続き、法人成りした場合の納税義務について、事例をあげて見ています。前回
までで4つの事例を見てきました。
☆【生徒】
法人成りした場合には、節税効果が期待できるけど、納税義務の判定をするにあ
たっては、いろいろと注意することがあるという話ですよね。
★【先生】
今回は、法人成りに限らず、法人を新たに設立した場合にも該当する話です。法人
設立後の免税期間が長くなる方法について見てみましょう。
☆【生徒】
えっ!そんな方法があるのですか?お得じゃないですか。
★【先生】
必ずしもお得とは限らないのですが・・・
法人を設立したは良いけれども、しばらく売上がたたないような場合に使えます。例え
ばお店が、法人成りに伴って店舗改装をして、しばらく営業できないような場合です。
営業再開の前後で決算期を一度区切ってしまうのです。
以下の例で、法人成りした後の納税義務の有無を考えてみてください。
・平成19年以前から継続して事業をしている個人事業者である
・平成19年11月1日に法人成りした
・資本金 : 10万円
・事業年度 : 11月1日~10月31日
・平成19年11月1日から11月30日までは、店舗改装のため営業をしていない
・平成19年12月1日から営業を開始した
・月の課税売上高は110万円程度であり、毎月ほどんど変化はない
☆【生徒】
第1期と第2期は、基準期間もないし、資本金も1,000万円未満だから納税義務
はない。
第3期は・・・毎月の課税売上高は110万円程度とのことなので、第1期の売上が
110万円×12・・・じゃなくて、×11ヶ月で1,210万円となり、1,000
万円を超えるから納税義務がある。
この法人は、第3期、つまり平成21年11月1日から納税義務があります。
★【先生】
そうですね。では、第1期目を11月30日で区切ってしまって、事業年度を12月
1日から11月30日に変更したら、第3期と第4期の納税義務はどうなりますか?
☆【生徒】
第1期目は平成19年11月1日から平成19年11月30日で課税売上高はゼロ円
となる・・・
第3期の基準期間は第1期だけど、第1期は1年未満だから、1年に割り戻す計算
をする。第1期の課税売上高はゼロだから、ゼロを1年に割り戻してもゼロ。だから
第3期は納税義務なし。
第4期の基準期間は第2期となって、第2期は1年間あるから110万円×12ヶ月
で、課税売上高が1,320万円となって、納税義務がある。
第4期、つまり平成21年12月1日から納税義務があります・・・あっ、免税期間
が一月延びました!
★【先生】
そうですね。法人成りでも新設法人でも、設立してしばらく売上がない、ということ
がはっきりしているようなときは、事業年度を調整することによって免税期間を延ばす
ことができるのです。
今回の例ですと、第1期を平成20年2月29日までとすると、事業年度を11月
30日までとしたときよりも、さらに三月免税期間が延長されて、平成22年3月1日
から課税事業者となります。計算してみてください。
計算の方法が良くわからなければ、『納税義務(法人:2)』 ~ 『(法人:7)』
までを読み返して考えてみてください。詳しいことは、来週解説します。
ただ、事業年度を区切るからには、事業年度は短くても、決算をすることになり、
法人税の申告が必要になります。ということは、そのための手間や会計事務所への
決算料など、本来必要ない経費が余分にかかることになります。
また、将来の課税売上高は、あくまでも予想ですから、この事例のように常にうまく
いくとは限りません。見積りをあやまると、かえって免税期間が短くなってしまうこと
もあります。
☆【生徒】
お得とは限らない、と言ったのはそのためですか。
★【先生】
そうです。
無断転用・転載を禁止します。
本メールマガジンに掲載されている著作物に対する以下の行為は、著作権法上禁止されており、著作権侵害になります。