【先生】
引き続き個人で不動産賃貸をされている場合のお話です。
前回は、ワンルームマンションの賃貸事業を行うサラリーマンの、
納税義務がある場合の「平成19年度の消費税の申告期限」に
ついてお話をしました。
【生徒】
このサラリーマンの平成19年度の消費税の申告期限は、
平成20年3月31日で、所得税の確定申告の申告期限より半月ほど
猶予があるのですよね。ただ、所得税の計算と消費税の計算は、
計算の都合上同時に進めるため、個人の消費税についても、
3月15日に申告してしまうことがほとんどだ、というお話でしたよね。
【先生】
そうです。
今回からは、その消費税の計算の内容について考えてみましょう。
このサラリーマンの基準期間における課税売上高が5千万円以下である
場合で、不動産賃貸の課税仕入れにかかる消費税が少ないときは、
原則的な仕入税額控除の方法より有利になる可能性がある計算方法が
あったのを覚えていますか?
【生徒】
簡易課税制度のことですね?
【先生】
そうです。簡易課税制度は、売上等で預った消費税に、第1種事業から
第5種事業までの、事業ごとに定められた「みなし仕入率」をかけることで、
課税仕入等の税額を計算するというものでした。
【生徒】
第1種事業が卸売業、第2種事業が小売業、第3種事業が製造業・建設業等、
第4種事業が・・・?
【先生】
第5種事業がサービス業等、第4種事業がその他の事業、というのがおおまかな
区分でした。第4種事業と第5種事業が、感覚的に逆のようなかんじがしますが、
第4種事業がその他の事業であっています。
それでは簡易課税制度では、不動産業は第何種事業に該当するか
わかりますか?
【生徒】
たしか不動産業は、・・・第5種事業じゃなかったですか?
【先生】
そうです。第5種のみなし仕入率は50%です。
このサラリーマンが簡易課税制度を選択した場合の課税仕入れにかかる
消費税は、売上で預った消費税に第5種事業のみなし仕入率50%を掛けた
金額となります。
この簡易課税制度を選択した場合の課税仕入れにかかる消費税が、
原則課税方式で計算した場合の課税仕入れにかかる消費税よりも大きくなる場合は、
預った消費税から控除できる消費税が大きくなりますので、納付する消費税額が
小さくなります。したがって簡易課税制度を選択したほうが有利ということになります。
【生徒】
たしか簡易課税制度を選択をするのは事前の届出が必要でしたよね?
【先生】
そうです。
簡易課税制度の適用を受けるには、原則として、簡易課税制度の
適用を受けようとする課税期間開始の日の前日までですので、今回の
ケースだと平成18年12月31日までに『簡易課税制度選択届出書』
を税務署に提出している必要があります。現在はすでに平成19年度に
入っているので、特別な条件がない限り、今時点で『簡易課税制度選択
届出書』を提出しても平成19年度からの適用とはならず、平成20年度
からの適用となるため、注意が必要です。
また、一度簡易課税を選択すると、最低2年は簡易課税で計算
しなくてはなりませんので、これについても注意が必要です。
【生徒】
それでは、有利になるからといって単に一年分だけで判断して
簡易課税制度を選択するのは注意が必要ということですね。
【先生】
そうです。
簡易課税制度の選択については慎重に、数年先を見越した判断が
必要となります。
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