週刊税務調査日記

株価が問題になった調査 (4)

第332号 2009/2/6

譲渡した株式の発行会社の決算書を見ると純資産(純資産とは資産から負債を引いた額です)がかなりの額で計上されています。

しかし、その決算書には年間売上高を上回る金額で在庫が計上され、かつ売掛金も月額売上高の6倍以上の額が計上されています。

我々会計のプロが見れば一目で決算書が粉飾されていることが分かります。

●税務署

「粉飾されているかどうかは分かりませんが、純資産が決算書上多額にありますので、売却した株式の時価はそれ相応の金額になりますよね?」

■会計事務所

「決算書の数字をそのまま使って株式を評価すれば確かにそうなります」

「しかし、粉飾した数字をそのまま使って株式の時価を算定することには問題がありますよね?」

●税務署

「まぁ 粉飾していることが間違いないならそうなります」

■会計事務所

「この決算書、正しいと思います?」

●税務署

「株主総会の承認を経て作成されたものですから、正しいのではないですかね?」

■会計事務所

「それはないですよ」

「この決算書を見れば誰でも粉飾していることは分かります」

「株式の評価においては、決算書に計上された金額をそのまま使うのではなくて、不動産や有価証券などは株式の評価時点の時価で計算し直した金額、売掛金についてはその時点の回収可能額、在庫についてはその時点の適正な評価額で計算しなおすことになっていますよね?」

●税務署

「それはそうですよ」

■会計事務所

「ですから、決算書の金額をそのまま使って株式の評価をするのは問題がありますよね?」

●税務署

「粉飾をしていればですね!」

「ですけれど、今時点では粉飾しているということは想像に過ぎませんから」

「譲渡した株式の発行会社に当たってみる必要があります」

■会計事務所

「そうしてください」

「こちらでも、会社を通して株式の発行会社に決算書の内容を聞いてもらいます」

ということで、実地調査は終了しました。

つづく

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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