週刊税務調査日記

特殊支配同族会社の調査 (2)

第302号 2008/5/12

税務調査官は決算日直前の株の移動について確認するのが、今回の調査の大きな目的のようです。

これがどういう意味をもっているかというと、特殊支配同族会社の規定と関連するのです。

特殊支配同族会社に該当する要件の一つに業務主宰役員関連者の持株比率が90%以上というものがあります。

この持ち株比率の判断は決算日現在の状況で行います。

調査会社の持ち株が決算日直前において社長から第三者に移動していることから、おそらく特殊支配同族会社外しを狙った意図的な移動とみたのでしょう。

一通りの帳簿調査が終わった2日目に、この株の譲渡の話が出ました。

●税務署

「決算期末直前に社長が譲渡した相手方は、どういった関係の方ですか?」

▲納税者

「昔からの友人です」

●税務署

「どういった理由で譲渡されたのですか?」

▲納税者

「同族以外の第三者を株主に含めることで、会社運営に忌憚のない意見を入れてもらうためです」

●税務署

「そうですか・・・」

▲納税者

「そうなんです!」

●税務署

「譲渡契約書は取り交わしていますか?」

▲納税者

「はい、あります」

●税務署

「御社は株式の譲渡制限が付いてますよね?」

▲納税者

「はい、確かに付いています」

●税務署

「ということは、株式を譲渡するには取締役会の決議が必要ですよね?」

納税者は、何のことか分からず、こちらに助けを求めているようです。

■会計事務所

「社長が株式を譲渡するには、譲渡制限の規定がされていると、取締役会で承認が必要なのです」

「ですから調査官は、その承認決議の議事録があるかどうか聞いているわけです」

▲納税者

「あ~ あの印鑑を押した書類ですね?」

■会計事務所

「そうです」

▲納税者

「あります。あります。」

●税務署

「では、見せていただけますか?」

つづく

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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