週刊税務調査日記

貸倒れをめぐる調査 (3)

第208号 2006/5/15

納税者の経理担当者が、不良債権先の会社に出しておくはずだった、債権放棄通知書を出していないことが調査の段階で判明しました。

得意先の経営状態が悪化して、債務超過の状態が相当期間継続している状況において、売掛金が回収できないような場合には、その会社に対する売掛金を放棄することにより、売掛金を貸倒損失として損金で計上することができるのです。

通常後日、債権を放棄したことの証拠とするために、内容証明郵便で、かつ配達証明を付けて得意先に送ります。

しかし、この手続を納税者は失念してしまったのです。

会計事務所としても、債権放棄手続の最終確認をせずに貸倒損失の経理処理をしてしまったこともいけません。

●税務署

「債権放棄通知書を決算日までに出していないんですね?」

▲納税者

「はい・・・すみません・・・」

●税務署

「そうすると、この貸倒損失は損金になりませんよ」

▲納税者

「・・・・・」

■会計事務所

「この得意先は破綻状態で、破産の申し立てをされているのですが・・・」

●税務署

「ご承知のとおり、破産の申し立てだけでは、貸倒損失として税法上計上できないですよね・・・」

■会計事務所

「・・・・・」

確かに調査官の言うとおりです。参りました。

▲納税者

「すみません」

「私が、出し忘れたばかりに・・・・」

●税務署

「では、本日の調査はこれで終了します」

「貸倒損失の件は、ご検討の上、ご連絡いただけますか?」

■会計事務所

「はい、わかりました」

調査官は、大きな指摘事項を発見できたことから、意気揚々と会社を後にしました。

▲納税者

「すみません。私のミスでご迷惑をおかけして・・・」

■会計事務所

「いや、私が最終確認を怠ったためです」

「てっきり思い込んで、確認するのを忘れてしまいました」

▲納税者

「本当にすみません・・・」

To be continued 

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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