調査当日です。
10時10分前に会社の会議室に出向くと、既にOB税理士は来ていました。
会社の経理担当者に紹介され名刺を交換します。
OB税理士といっても、よぼよぼのおじいさんではなく、60歳くらいのバリバリの税理士でした。
■会計事務所
「宜しくお願いいたします」
◆OB先生
「こちらこそ、宜しくお願いします」
挨拶を交わしていると、国税局の調査官がやって来ました。
30台半ばの調査官と、50半ばの統括官です。
名刺をわたして挨拶をします。
●税務署
「いや~。名刺をもらうまでもないですが・・。頂戴いたします。」
といって統括官はOB税理士の名刺を腰をかがめて丁寧に受け取りました。
若い調査官も緊張した様子でOB税理士の名刺をもらっています。
お茶が出てきて、まずは雑談です。
見ると、統括官も若い調査官もソファの背に背中を付けないで、背筋を真っ直ぐ伸ばして座っています。
緊張感がありありと感じてきます。
◆OB先生
「○○君は、今の部署は長いんだっけ?」
すごいです。統括官を君付けで呼んで、だっけ言葉を使っています。
●税務署
「はい、3年目ですから、もうそろそろ異動かと思います」
◆OB先生
「××君は元気にしている?」
●税務署
「ええ、元気にやっています」
「先生に会ったら、宜しく言っといてくれと言われました」
◆OB先生
「ああそう。はぁはぁは」
「いや、彼とは一緒によく飲んだよね」
「それとゴルフもよくやったよね」
「それから彼は?・・・」
といった具合に、国税局の昔の同僚の話が続きます。
こちらが口を挟む余地などありません。
同席している会社の経理担当者と私と若い調査官は、ただ黙って統括官とOB税理士との身内話を聞いているだけです。
OB税理士は足を前に組んで態度が大きいですが、統括官は相変わらず背筋を真っ直ぐに伸ばして対応しています。
考えてみれば、OB税理士は統括官の現在の上司の更に上の上司のような存在だった訳ですから、現在でも統括官の上司に対してはかなりの影響力があると考えることができます。
統括官の背筋が真っ直ぐに伸びるのも仕方がないかもしれません。
しかし、こんな状況でチャンとした税務調査ができるのでしょうか?
To be continued
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