●税務署
「え~。あと株主名簿はありますか?」
「お父さんが経営されていた会社の株主名簿です」
▲納税者
「ええ、あるかどうか会社の経理の人に聞いてみます」
●税務署
「会社を設立してから今現在までの間の株主名簿をいただきたいのですが?」
▲納税者
「はい、聞いてみます」
亡くなったお父さんの相続財産には、お父さんが経営していた会社の株式も含まれています。
会社が不動産を所有していたり、利益の蓄積が大きい会社の株価は相続税法に従った評価をすると、1株5万円で出資した株が相続時には1株100万円近くなるということがざらにあります。
ですから、相続財産としてお父さんが所有していた株式が、正しく計上されているかどうかを税務署は確認する必要があるのです。
今回の相続においても、お父さんの会社の株価は1株5万円で出資したものが、相続税評価で75万円になっています。
なんと15倍も株式の価値が増えた計算です。
納税者が会社に連絡して、会社の経理の人が株主名簿の綴りを持って来ました。
「はい、これが株主名簿の綴りです」
●税務署
「はい、ありがとうございます」
調査官は株主名簿の綴りをめくっています。
「お母さんが、会社設立当時に出資したことになっていますが、お母さんは本当にお金を出して出資しましたか?」
▲納税者(お母さん)
「ん、寿司ですか?」
「わたしゃね、トロとか高級な寿司より昔からかっぱ巻きが好きなんですよ」
「わさびをチョッと多めにつけたかっぱ巻きが大好きです」
●税務署
「いえ、お母さん。寿司ではなくて、出資です」
▲納税者(息子)
「お父さんが会社を作ったときにお母さんがお金を出したかどうかということを税務署の方は聞いているの」
「お金を出した記憶ある?」
▲納税者(お母さん)
「お金はお父さんがすべて管理していたからね・・・」
「そんな昔のこと覚えてないわ・・・」
●税務署
「そうですか」
税務署はお母さんの所有する会社の株式をいわゆる「名義株」ではないかと疑っているのです。
「名義株」とは、実際はお金を出資していないで、名前だけを借りた株主のことを言います。
お母さん名義の株式が、実はお父さんがお金を出して名義だけお母さんである「名義株」であると認定されると、これはお父さんの相続財産に組み入れられてしまいます。
相続財産の申告漏れとなってしまうのです。
調査はまだ続きます・・・・
To be continued
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