納税者の取引銀行にも調査官が行っていたらしく、その調査官が戻ってきました。
今回の調査は、所轄の税務署単独の調査のようです。
前回は調査の主体が国税局でしたので、調査する親分の格が違いました。
今回の調査責任者は所轄の税務署の上席(会社で言う係長)です。
他部門からの応援も相当来ているみたいです。
調査の中心はやはり前回問題となった材料の仕入関係をやっているみたいです。
チョッと心配になってきました。
社長に小声で聞いてみます。
■会計事務所
「社長、もうやっていないですよね!」
▲納税者
「先生、もうやってないよ」
「いつもニコニコ明朗会計だよ」
■会計事務所
「いつもニコニコ・・・?」
ま、ウソを言っている顔ではないので安心しました。
ひととおりの書類のひっくり返しが終わり、そのために来た調査官は署に帰って行きました。
残ったのは4人の調査官です。
●税務署
「直前期に会社から社長さんに売却した土地についてですが・・・」
■会計事務所
ああ、あのことか・・・
前期は思わぬ利益が出てしまい、このままでは多額の納税になることから、バブル期に高値で買った土地を社長に売却して多額の売却損を出したのでした。
つまり、多額の含み損を売却によって表に出したわけです。
この結果、商売での利益と売却損が相殺され、多額の納税資金が社内に留保できるわけです。
この場合、会社と社長との直取引となりますから、売却する価額が税務上問題になります。
会社と第3者との取引であれば問題ないのですが、会社と社長とでは価格の操作はいくらでもできてしまうからです。
売却価額は適正な時価によらなければなりません。
●税務署
「会社と社長さんとの間で取り交わされた売買契約書と登記簿謄本を見せてください」
「それと先生、売買価額は何を基準として決められたのですか?」
■会計事務所
「公示価格を基準として算出しました」と言って、算出資料を渡します。
●税務署
「署で検討しますのでコピーをいただけますか?」
公示価格を基準として売買価額を算出しているので、問題となることはないはずです。
これが、適正な時価より低い売買価額で取引されでもしていたら、会社が売却によって実現させた売却損自体の妥当性に影響してくるのです。
今回は、問題ないはずです・・・
To be continued
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