5月24日の新聞記事で、「国税局の査察官に成り済まし、偽物の身分証明書や礼状らしきものを見せることにより経営者を信用させ、差し押さえだといって現金や有価証券を持って行ってしまう事件が発生している」とありました。
確かに調査官は特別の制服を着ているわけではなく、通常のスーツにネクタイですから、その姿格好からは本物か偽物か判別できません。
騙された経営者として飲食店の経営者が記事で書かれていましたが、これも前回までの「飲食店の調査」をお読みになっていれば、「なるほど」と思われるのではないでしょうか。
現金商売ですと、少なからず、すねに傷を持つようなことがある経営者の方がいらっしゃるのではないでしょうか。なかなか戦略的な犯罪者だと思います。
また、実在の国税局の統括官の名前を語っていたということですが、これも巧妙ですね。
東京国税局には査察部門が36部門あります。そして各部門が1年間に調査する対象会社は20社にも満たないと思います。
ですから、査察の対象として選ばれるのは、億単位のしかも相当悪質な脱税行為をしていて、かつその証拠を国税当局がほぼ握っている会社で、たいへん名誉ある?会社なのです。
ですから、普通に商売している飲食店等にはまず国税局の査察が入るといったことはないわけです。
おそらく被害に遭われた経営者の方は、突然のことで気が動転して、言われるままに現金などを提出してしまったと思われますが、気の毒としか言いようがありません。
通常の調査でも税務調査官が突然自宅や会社に現れることがありますので、そのときの対処法をあげておきましょう。
◆1.顧問税理士にまず連絡する。
連絡を受けた税理士は、調査官と直接電話により今回の調査の趣旨、なぜ事前予告なしに突然来たかを聞いて対応します。
◆2.税理士が立ち会うまで、調査官に待ってもらう。
通常調査では、強制的にキャビネットを開けて書類を見たりするようなことはできませんので、税理士が来るまでお茶を飲んで待ってもらいましょう。
◆3.査察のようだけれども査察でない調査がある。
査察まで行かないプチ査察があります。これは、脱税の嫌疑はあるが、査察部門がやるほどでもない調査で、国税局の資料調査課が担当します。
査察のように突然会社と経営社宅に調査に来ます。しかし、これも任意調査なのです。
取り合えず通常の任意調査と同じような対応をとりましょう。
しかし、脱税の相当な証拠は握ってきているはずです。厳しい調査となります。
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