週刊節税教室

グループ法人税制-譲渡損益の繰延べ

法人税
第389号 2010/8/9

☆質問

「私が100%の株式を所有するA社とB社の2つの会社を経営しています」

「A社はかなり以前に取得した商業ビルを所有しています」

「ビルの賃貸収入は年間数千万円あり、赤字会社であるB社に譲渡することを考えています」

★回答

「B社に商業ビルを移せば、年間数千万円の家賃収入は、赤字会社であるB社で計上することになり、節税になりますね」

☆質問

「でも、A社が有する商業ビルの帳簿価額は1億円で現在の時価は3億円ですので、B社へ譲渡すると2億円の利益がA社に出てしまいます」

★回答

「A社で利益が出ることから、多額の納税が必要であることを懸念している

のですね?」

☆質問

「そのとおりです」

「A社に多額の納税があるのでは、ビルをB社へ移すことはできません」

★回答

「しかし、その心配はご無用です」

「今年の10月1日からは、A社の納税なしにビルをB社へ移せます」

☆質問

「え~ 本当ですか?」

★回答

「本当です」

「あなたが100%所有するA社とB社は、完全支配関係にある内国法人に該当し、譲渡する商業ビルは譲渡損益調整資産に該当することから、グループ税制が適用され、A社の計上する2億円の譲渡益への課税は繰延べられるのです」

☆質問

「繰延べられるということは、いずれは課税されるということですか?」

★回答

「そうです」

「商業ビルを取得したB社が、そのビルを譲渡するまでA社で計上する譲渡益に対する課税が繰延べられるのです」

☆質問

「ということは、B社が取得した商業ビルを手放さなければ、永遠にA社の譲渡益は課税されないのですね?」

★回答

「A社におけるビルの譲渡益が、すべてビルの敷地である土地の譲渡益である場合には、そのとおりとなります」

☆質問

「建物はA社の帳簿価額で譲渡しますので、譲渡益はすべて土地になります」

「さっそく、この話を具体的に検討してみます」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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