週刊節税教室

配当と株式譲渡損失の損益通算

所得税
第377号 2010/1/20

☆質問

「信託銀行から配当金支払明細書が送られてきました」

「今までは送られてこなかったと思いますが、どうしてですか?」

★回答

「平成21年から上場株式等の譲渡損と上場株式にかかる配当金との損益通算ができるようになったからです」

☆質問

「損益通算ということは、上場株式等の譲渡損と配当金を相殺して、譲渡損の金額が配当金より多い場合は、譲渡損を配当金の額だけ減少させて、同時に配当金の所得をゼロにするということですね?」

★回答

「そのとおりです」

「ただし、確定申告により申告分離課税を選択することが必要です」

☆質問

「私は、給与所得がかなり多いことから配当は申告しないつもりでしたが配当金を株式等の譲渡損から全額差し引けるのであれば、配当から10%源泉徴収されている源泉所得税が還付されますね?」

★回答

「上場株式にかかる配当金は10%源泉徴収されていて、そのまま申告しないことも、また給与所得等と合算されて課税される総合課税を選択して配当控除を受けることもできますが、高額所得者にとっては総合課税の選択は税金が不利でした」

「しかし、上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度ができたことから、確定申告をして配当と譲渡損との損益通算をすることにより、配当にかかる源泉所得税を還付してもらうことができます」

☆質問

「なるほど、だからそのために信託銀行から配当金支払明細書が送られてきたわけですね?」

★回答

「そのとおりです」

☆質問

「上場株式等の譲渡損がある人にとっては朗報ですね?」

★回答

「しかし、喜んでばかりはいられません」

☆質問

「え、何か申告することによるデメリットがあるのですか?」

★回答

「主婦や学生や無職のお年寄りなどが、他の所得者の配偶者控除や扶養控除の対象になっている場合は、配当の確定申告には注意が必要です」

☆質問

「それはなぜですか?」

★回答

「配当を確定申告することにより配偶者控除や扶養控除の判定基準となる合計所得金額がその分増加するからです」

「配当にかかる源泉所得税を数万円還付したのはよいけれども、合計所得金額が増加することにより配偶者控除や扶養控除がからはずれて、夫や親の税金が増えてしまうのでは何もなりません」

☆質問

「なるほど」

「よく分かりました」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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