週刊節税教室

渡りで退職金

法人税・所得税
第371号 2009/9/4

☆質問

「元文部科学審議官の矢野重典氏が、日本学生支援機構の理事から、公立学校共済組合の理事長に就任した際に、機構から支払われる退職金を辞退していたと報道されています」

「何で辞退したんですかね?」

★回答

「元役人が役所所管の公益法人を就職→退職→就職→退職を繰り返すことを渡りと言います」

☆質問

「公益法人を次から次へと渡り歩くことから渡りというのですかね・・・」

★回答

「渡りによる退職の都度、元役人は退職した公益法人から退職金をもらうのが慣例となっています」

「そして、この退職金が渡りの批判の元となっているのです」

☆質問

「なぜですか?」

★回答

「退職金は退職後の大切な生活資金ですから税制上税金が安くなるように扱われています」

「矢野重典氏は、2年4ヶ月くらいの勤続で300万円程の退職金をもらえたようです」

☆質問

「2年4ヶ月で300万円の退職金ですか?」

「ちょっと多すぎますよね」

★回答

「普通では考えられないですね」

「この300万円の退職金にかかる税金は126,000円だけです」

「手取額は2,874,000円になります」

☆質問

「ヒョエ~ たった126,000円の税金ですか?」

★回答

「そうなんです」

「およそ2年ごとに渡りで退職を繰り返し、公益法人を4社退職すると、1社300万円として総額1,200万円の退職金をもらったとしても税金は504,000円だけです」

「退職金の手取額は11,496,000円となるのです」

「中小企業でも、グループ会社が複数ある場合に、各会社を渡りと同様に退職→就職を繰り返して高額の退職金を受給すれば、同様の節税メリットが受けられることになります」

「しかし、そうすると税務署は高額退職金であるから退職金を全額法人の損金に算入するのは無理と言うでしょうね」

☆質問

「公益法人がOKで、中小企業がNOという理屈はないと思いますが・・・」

★回答

「確かにそうですね」

☆質問

「そう考えると矢野重典氏は立派ですね?」

★回答

「同感です」

「他の元役人も見習ってもらいたいですね・・・」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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