☆質問
「父が余命1年くらいと医者に言われています」
「父は先祖代々引き継がれた不動産をかなり所有していますので、相続が
あった場合には、相続税が多額にかかってきます」
「現在、父所有の不動産を購入したいという申し入れがあります」
「今売却した方がよいのか、相続をした後に売却した方が得なのか、教えて
ください」
★回答
「先祖代々の不動産ということで、おそらくその不動産の取得価額は不明
でしょう」
「そうすると、売却金額の5%がその不動産の取得価額となります」
「不動産の譲渡所得は、売却金額-取得価額 で計算されますので、売
却価額-売却価額×5%となり、売却価額の95%が譲渡所得になります
(相続した不動産の登記費用などがあれば、譲渡所得から引けます)」
「現在の長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日で所有期間が5年超)の税率
は、国税15%、地方税5%の合計20%です」
「したがって、この不動産の譲渡にかかる税金は、長期譲渡所得×20%で
計算されます」
☆質問
「1億円で不動産を売却した場合を例にして具体的に教えてください」
★回答
「相続した不動産の登記費用は無視して計算します」
「1億円-1億円×5%=9,500万円 が長期譲渡所得です」
「9,500万円×20%=1,900万円が税金です」
☆質問
「この税金が、相続前に不動産を売却した場合の税金と考えてよろしいの
ですね?」
★回答
「そのとおりです」
☆質問
「では、相続後の不動産譲渡の税金はどうなりますか?」
★回答
「相続後に不動産を譲渡する場合は、その不動産は相続税の対象になり
ます」
「しかし、その不動産に係る相続税相当額は、相続後の不動産の譲渡に
おける譲渡所得の計算上、取得価額に加算することができます(相続税の
申告期限の翌日から3年を経過する日までに譲渡することが必要)」
☆質問
「売却価額1億円で、取得価額に加算する相続税が3,000万円とすると、
不動産譲渡の税金の計算はどのようになりますか?」
★回答
「1億円-(1億円×5%+3,000万円)=6,500万円 が長期譲渡所得で
す」
「6,500万円×20%=1,300万円が税金です」
☆質問
「相続後の方が得ですね?」
★回答
「そのとおりです」
☆質問
「しかし、相続税はどちらが得なのですか?」
★回答
「相続前に売却した場合は、売却代金1億円から譲渡所得税1,900万円を
差し引いた8,100万円が相続税の対象になります」
「売却不動産の相続税評価額も売却価額と同額の1億円として、相続税率
30%だとすると相続前に売却した場合の、その譲渡所得税差し引き後の
売却代金にかかる相続税は、8,100万円×30%=2,430万円になります」
「一方、相続後に売却した場合の、不動産にかかる相続税は1億円×30%
=3,000万円になります」
「その結果、譲渡所得税1,900万円に相続税率30%を掛けた額である570
万円だけ、相続前に売却した場合の方が相続税が安くなります」
☆質問
「で、結局どちらが得ですか?」
★回答
「譲渡所得税は、相続後に売却した方が1,900万円-1,300万円=600万
円得になります」
「相続税は、相続前に売却した方が570万円得ですから、600万円-570
万円=30万円だけ相続後に売却した方が得であったことになります」
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