週刊節税教室

身内に支払う経費

所得税
第191号 2005/8/1

☆質問

『新聞に、弁護士である夫が、税理士である妻に支払った顧問料

は、夫の個人事業の必要経費にならないという裁判所の判決があ

ったと出ていました』

『これって、どういうことですか?』

★回答

所得税法56条で、「個人事業者と生計を一にする配偶者その他の

親族に、事業のために何かをしてもらって、その対価を支払った

としても、その支払は個人事業者の経費にはならない」と規定さ

れています。

裁判所の判決は、この規定に沿ったものです。

☆質問

『何で生計を一にしているとダメなのですか?』

★回答

生計を一にするということは、財布を共にするということですか

ら、そういう間柄では何でも自由勝手にできるということから、

こういう規定を設けているのだと思います。

☆質問

『夫が弁護士事務所を持っていて、妻も別のところに税理士事務

所を持っていれば、税理士報酬は支払った夫の経費として認めら

れても良さそうなものですよね?』

★回答

確かにそうですね。

☆質問

『私は父親が所有している建物を借りて個人事業を始めようと思

っているのですが、父親に支払う予定の家賃も私の事業の必要経

費にならない可能性があるということですね?』

★回答

そのとおりです。

あなたとお父さんが生計を一にしていると、家賃は必要経費にな

りません。

☆質問

『父とは同居していますが、生計を一にしないようにすれば父に

支払う家賃は必要経費になりますね?』

★回答

生計を一にしていないのなら、必要経費になります。

☆質問

『食費や水道光熱費、トイレットペーパーなども私と父が別々の

財布で賄えば良いわけですか?』

★回答

基本的にはそういうことになりますが、一緒に暮らしていると全

てについて別々の財布というのも難しいところですね・・・

☆質問

『もし、父と生計を一にしていると見なされると、支払った家賃

は全額私の個人事業の経費にならないのですか?』

★回答

そうです。

しかし、お父さんが支払ったその建物の固定資産税や火災保険料、

借入金利息などは、あなたの個人事業の経費とすることができる

のです。

☆質問

『なるほど、生計を一にしていれば、父が私からもらった家賃を

不動産所得として申告する場合の必要経費を、私の個人事業の必

要経費とすることができるのですね?』

★回答

そのとおりです。

生計を一にするかしないかで、税金の負担が変わってきますので、

よくそのあたりを確認してから身内に対価を支払う必要があるの

です。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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