☆質問
『一昨日の新聞に、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社が大
阪国税局から源泉所得税約6,500万円の徴収漏れを指摘された」とありましたが、
これはどのような意味なのでしょうか?』
★回答
まず、源泉所得税の意味ですが、これはお分かりでしょうか?
☆質問
『いえ、分かりません』
★回答
源泉所得税とは、給料や報酬の支払者がその支払額から一定の税金を天引きし
て税務署に納めるものです。
身近な源泉所得税として、毎月の給与から天引きされる給与所得の源泉所得税
があります。
他には、株主が配当を受ける場合や、公認会計士や弁護士や芸能人が報酬を受
ける場合に源泉所得税を天引きされます。
これらの給料や配当や報酬の支払者は「源泉徴収義務者」として、源泉所得税を
支払額から天引きして納税する義務があるのです 。
USJが徴収漏れを指摘されたということは、支払額から天引きして納税しないで、
そのまま支払ってしまったということです 。
☆質問
『USJは外国法人や外国籍の芸能人に対する支払で源泉所得税の徴収漏れを指
摘されたということですが?』
★回答
外国法人や、外国籍の芸能人が日本国内で仕事をして報酬を受ける場合には、そ
の支払者は支払額の20%の源泉所得税を天引きして相手先に支払い、天引きした
20%の源泉所得税は翌月の10日までに納税することになっています 。
USJは米国のユニバーサル・スタジオ社にコンサルタント契約料2億5,000万円を支
払い、さらに外国籍の芸能人報酬1億5,000万円を支払いました。
しかし、コンサルタント契約料については源泉所得税を天引きしないで支払い、芸能
人報酬については10%しか源泉所得税を天引きしなかったということです 。
ですから、コンサルタント契約料については5,000万円(2億5,000万円×20%)、
芸能人報酬については1,500万円(1億5,000万円×10%、本来は20%だが、支払時
に10%は天引きして既に納税しているため)が源泉所得税の徴収漏れとなってしまっ
たのです 。
源泉所得税の徴収漏れは5,000万円と1,500万円の合計6,500万円です。
☆質問
『新聞では、不納付加算税などを含め約7,000万円を追徴課税とありましたが?』
★回答
源泉所得税を支払額から天引きして納期まで納税しないと、税額の10%が不納付加
算税として課せられるのです 。
ですから、徴収漏れの6,500万円に不納付加算税がその10%で650万円足されます 。
すると追加納税額は7,150万円となります。
さらに、納期から2ヶ月までは4.2%、3ヶ月以降は14.6%の延滞税も加算されるのです 。
☆質問
『実際は、7,000万円を超えそうですね。それにしても、外国人や外国企業と取引する
場合には源泉所得税は要注意ですね?』
★回答
そのとおりです。
外国法人や外国人から国内でサービスの提供を受ける場合のみならず、外国法人から
国内で使うノウ・ハウを取得したり、著作権の使用料を支払ったりした場合には、やはり
その支払額から源泉所得税を天引きして納税する必要があります 。
億単位の使用料を払って、悪意がなく全くの不注意で源泉所得税を天引きし忘れただけ
で、数千万円の追加納税と数百万円の不納付加算税を取られるのですから堪ったもので
はありません 。
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