☆質問
『先週の新聞記事で、上場会社のオーナーが所有する自社の株式を節税のために市場で売却して、全株を買い戻しているとありましたが、どのような節税策なのでしょうか?』
★回答
上場株式の譲渡による課税方法は、現在、売却益の26%を課税する申告分離課税と、売却額の1.05%を課税する源泉分離課税の2つの方法があります。
☆質問
『もう少し具体的に教えてください?』
★回答
はい、50万円で買った株式を100万円で売却したとします。
申告分離課税
100万円-50万円=売却益50万円
50万円×26%=13万円(納税額)
源泉分離課税
100万円(売却額)×1.05%=10,500円(納税額)
税金の計算方法は以上のとおりで、源泉分離課税を選択した方がかなり有利となります。
この源泉分離課税が今年いっぱいで廃止となります。
平成15年からは税率が20%に下がって、申告分離課税だけとなります。
なお、3年間の時限措置として、1年を超えて保有した上場株式だけは平成15年から17年の間は税率が10%になります。
☆質問
『税率が下がって申告分離課税一本になるということは分かりました。それと上場会社のオーナーが自分の会社の株式を一度全部売って、翌日に全て買い戻していることの関係がよく分かりません』
★回答
上場会社のオーナーが保有する自社の株式の買値は極端に安いのです。
会社設立当初から自分の会社の株式を所有しているのですから、今現在1株100万円する株式でも、買値は50円~30万円くらいはザラにあります。
ですから株式を売ると、売値から買値を引いた差額である売却益が多額に出ることになります。いくら税率が下がるといっても売却益に税率がかかる申告分離課税方式ですと、納税額が多額になるのです。
そこで、今年中に一度買値の安い自社の株式(買値10万円)を全て時価で売却して(時価100万円)、売却額に1.05%をかける源泉分離課税により10,500円納税します。
そして、翌日全株式を時価100万円で買い戻すのです。
この買戻しによりオーナーの自社の株式の買値は、売却前の10万円から100万円にアップし、将来株式を売却するとしても買値が高くなりましたので、売却益は少なくなり、売却益に税率がかかる申告分離課税を適用しても税負担は少なくなるわけです。
なお、平成13年9月30日以前から持っている上場株式等を平成15年から22年までに譲渡した場合の売却額から差し引く株式の買値は、いくらで買ったものであっても平成13年10月1日の80%とすることができます。
無断転用・転載を禁止します。
本メールマガジンに掲載されている著作物に対する以下の行為は、著作権法上禁止されており、著作権侵害になります。