【先 生】
「さて、前回では、基準期間の捉え方についてお話しした訳だけれど、今回は、その基準期間における課税売上高の算定方法についてお話しするわね。」
【生徒♂】
「基準期間の捉え方は、何となく分かったけどさ、そもそも“基準期間における課税売上高”って何なのかな?」
【先 生】
「基準期間における課税売上高というのはね、『基準期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額(消費税抜き)の合計額から、売上に係る対価の返還等の金額(消費税抜き)の合計額を控除した残額』をいうのよ(消法9条2項1号、消法28条1項)」
【生徒♀】
「それはつまり簡単に言うと、基準期間中に国内において行った『消費税抜きの純売上高』って事ですわね?」
【先 生】
「察しがいいわね。そのとおりよ。基本的には、基準期間中における消費税抜きの純売上高で判定するのだけれど、ちょっと注意点があるのよ。」
【生徒♀】
「どんなことですの?」
【先 生】
「その基準期間自体が、課税事業者であった場合には、その基準期間中の課税売上高には消費税が課されているから、消費税抜きの純売上高で判定するの。でもその基準期間自体が免税事業者だった場合には、その基準期間中の課税売上高を消費税抜きに変換する必要が無いのよ。」
【生徒♀】
「じゃあ、例えば、基準期間中の課税売上高が1,000万円(税抜き)、これに対する消費税が80万円(税率8%)とした場合、この基準期間が課税事業者だった場合には、税抜きである1,000万円が基準期間における課税売上高になるのですわよね?」
【先 生】
「そのとおりよ。」
【生徒♂】
「でも、その基準期間が免税事業者だった場合には、税込である1,080万円が基準期間における課税売上高になるって訳だね?」
【先 生】
「そのとおりよ。基準期間が免税事業者だった場合には、その基準期間中における課税資産の譲渡等には、消費税が課されていない。従って、その基準期間中における課税資産の譲渡等に伴って収受し、又は収受すべき金銭等の全額、つまり、税抜きに変換する前の課税売上高が、基準期間における課税売上高になるってわけ(消基1-4-5)」
【生徒♀】
「それはつまり、免税事業者は消費税を納める義務が免除されているのだから、その事業者の売上代金の中には、消費税は含まれていない。だから、課税売上高の算定にあたり税抜きには変換しないって事ですの?」
【先 生】
「そういう事になるわね。」
【生徒♂】
「でもさ、免税事業者になるような小さなお店でも僕達が買い物をする際には、きちんと消費税を払っていると思うんだけどな・・・」
【先 生】
「確かにそうね。たとえそのお店が免税事業者に該当していたとしても私達消費者が買い物をする際には、きちんと消費税を払っているケースが多いわよね。つまり、そのお店の売上代金の中には、消費税相当分が含まれている事になるわね。」
【生徒♂】
「それでもやっぱり免税事業者であったなら、税抜きに変換する前の課税売上高の金額で納税義務を判定するんだね。何だか矛盾しているような気がするな・・・」
【先 生】
「確かに矛盾している気がするわね。この矛盾点に対しては、免税事業者は消費税を納める義務が免除されているのだから、当然、課税資産の譲渡等に伴い消費税を預かる必要が無い。つまり、その売上代金には消費税は含まれておらず、消費税相当として収受している金額は、消費税という税金ではなく単なる売上代金の上乗せ部分である、という解釈をするしかないと思うわ。」
【生徒♀】
「なるほど。そういう解釈になるのですわね。これで基準期間における課税売上高の捉え方が理解出来ましたけれど、これを用いて具体的にどのように納税義務を判定しますの?」
【先 生】
「では今回はここまでとして、次回は、基準期間を用いた納税義務判定を具体的にみていきましょう。ではまた次回!ばいばい!」