週刊税務調査日記

株価が問題になった調査 (6)

第334号 2009/2/24

株式の発行会社の社長から直接決算書の内容を聞いたところ、銀行対策のため、決算書を粉飾しているとのことでした。

決算書を一目見て分かりましたが、やはり決算書は会社の真実の姿を表していませんでした。

会社の実態を表していない決算書をもとにその会社の株価を算定するのはナンセンスです。

実地調査から数週間後、調査官から税務署に来てもらいたいとの連絡がありました。

担当者と税務署に向かいます。

●税務署

「お忙しいところすみません」

「早速ですが、あの株価の件については検討していただけましたでしょうか?」

■会計事務所

「ええ、検討しました」

「株式の発行会社の経営者に連絡を取ったところ、決算書は会社の真実の姿を表していないとのことでした」

「したがって、売買した株式の取引価格に関してはなんら問題のないということが、私たちの見解です」

●税務署

「そうですか・・・」

「我々の入手した情報では、そのようなことはないのですが・・・」

■会計事務所

「どのような情報ですか?」

●税務署

「在庫が多いのは、翌期首の大口取引のために、決算期末に新製品を大量に購入したことによるものと聞いています」

■会計事務所

「我々はそのような話は聞いていません」

「また、そのようなことが仮にあったとしても、想像の域を出ないわけで、それをもって決算書が実態を表しているのかどうかということを議論しても仕方ないと思います」

こんなやり取りが続きましたが、最終的に株価の件は指摘だけに留められました。

決算書をもとに株価を計算するのは分かりますが、そのもととなる決算書が粉飾されたものであっては話になりません。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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