週刊節税教室

法人成りのタイミング

所得税、消費税
第158号 2004/11/8

☆質問

『個人事業を営んでいますが、法人を設立して法人成りすることを考え

ています』

『今年法人成りするか、来年法人成りするか迷っています』

『どちらが税金の計算で得ですか?』

★回答

まず、今営んでいる事業の内容を教えてください。

☆質問

『音楽の録音編集スタジオの経営です』

★回答

そうすると防音設備や録音編集機器などの設備の金額は相当なもの

になりますね?

☆質問

『帳簿価額で6千万円くらいの設備金額になります』

★回答

なるほど。

個人事業を法人成りする場合、それら設備を設立した法人に引き継ぐ

必要がありますよね。

☆質問

『そうです。そうしないと法人で営業できませんから』

★回答

個人事業から法人に設備を引き継ぐには、設備を個人事業から法人が

買い取る必要があります。

つまり、個人が法人に設備を譲渡することになります。

☆質問

『譲渡ということは、個人で所得税が課税されるのですか?』

★回答

設備の帳簿価額以上の額で譲渡すれば、当然所得税は課税されます。

しかし、設備の帳簿金額で法人に譲渡すれば所得は発生せず、所得税

がかかることはありません。

ところで今現在、個人事業は消費税の課税事業者ですか?

☆質問

『いえ、今年は消費税を申告する必要のない免税事業者です』

『来年から個人事業は消費税の課税事業者になります』

★回答

そうであれば、法人成りは今年の方が得策ですね。

☆質問

『え。所得税は課税されないわけですから、税金は法人成りが今年でも

来年でも一緒ではないのですか?』

★回答

いいえ。消費税が違ってくるのです。

今年法人成りして個人事業の設備6千万円を法人に譲渡しても、今年

は消費税の免税事業者ですから6千万円の譲渡に消費税がかかるこ

とはありません。

☆質問

『来年譲渡すると?』

★回答

来年は消費税の課税事業者ですから、設備の6千万円の譲渡に対し

て消費税がかかります。

6千万円の5%の3百万円もの消費税を納めなくてはならなくなる可能

性があるのです。

このように消費税は所得税がかからない取引にも課税され、思わぬ納

税が発生することになります。

消費税は要注意の税金です。

税金のプロでも適用を誤る例が続出しています。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

無断転用・転載を禁止します。

本メールマガジンに掲載されている著作物に対する以下の行為は、著作権法上禁止されており、著作権侵害になります。

  • ○著作物を、私的利用の範囲を超えて権利者の許可なく複製する行為
  • ○著作物を、インターネット上で公衆が取得可能な状態にする行為
  • ○著作物の全部もしくは一部を権利者の許可なく改変する行為