週刊節税教室

不動産経営で節税

所得税
第132号 2004/5/3

☆質問

『私は給与で約3千万円の収入があり、不動産会社から節税のために賃

貸不動産の経営を薦められています。』

『特に中古物件が利回りが良く、税金上も有利であると言われていますが

どうしてですか?』

★回答

不動産会社が節税になるというのは、賃貸不動産の経営により生じた損

失が給与所得と相殺されて(損益通算)税金が安くなることを言っている

のでしょう。

賃貸不動産の経営で利益が出ればその分給与所得に不動産所得がプラ

スされて、逆に節税どころか税金がさらに増えてしまいます。

☆質問

『それはそうですよね』

『でも、賃貸不動産の経営で赤字が出て、つまり損をして税金が安くなっ

ても嬉しくないんですけれど・・・』

★回答

不動産所得が赤字になる主な原因は、購入した不動産の建物の減価償

却費によるところが大きいのです。

減価償却とは、建物の金額を使用可能期間(耐用年数)に亘って経費と

するものです。

不動産所得は家賃収入から金利・管理費・固定資産税・火災保険料など

の経費を差し引いて計算しますが、減価償却費もこの経費のひとつとして

計算されるのです。

☆質問

『購入した建物の金額が毎年一定額経費として計上されるから、賃貸不

動産経営でお金はプラスでも、税金を計算する不動産所得でマイナスとい

うこともあるわけですね?』

★回答

そうです。

不動産業者が中古の物件の方が税金上有利であると言ったのも、建物

の減価償却費に関わることだと思います。

中古の建物に適用される耐用年数(使用可能期間)は税法上次のように

計算されます。

  ●耐用年数の全部を経過したもの

       「耐用年数×0.2」

  ●耐用年数の一部を経過したもの

      「耐用年数-経過年数×0.8」

鉄筋コンクリート造りのマンションを2千万円で購入し、建物の金額が1千

万円とします。耐用年数は47年です。

新築の場合の建物の減価償却費は次のとおりとなります。

   10,000,000円×0.9×0.022(47年)=198,000円

30年経過の中古の場合の減価償却費は次のとおりとなります。

   10,000,000円×0.9×0.044(23年)=396,000円

     耐用年数は47年-30年×0.8=23年で計算されます。

☆質問

『なるほど、経費となる減価償却費の額が倍違いますね。その分不動産

所得の計算で経費になる額が多くなるのですね。よく分かりました』

★回答

ワンルームマンションなどの賃貸不動産経営ではこのように建物の減価

償却費が税金計算上で大きく影響してきます。

都心の地価の高いところでは、土地代が多くかかり、購入金額に占める

建物の金額が少ない傾向があります。

逆に地方都市では土地代が安く、購入金額に占める建物の金額が多く

なり、税金だけを考えれば建物の減価償却費が多く計上できて有利で

あるといえます。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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