☆質問
『先週丸紅の申告漏れのニュースがありました。その中で海外子会社への出向者に対する給与差額の負担金が認められなかったとありましたが、意味が分かりません。教えてください。』
★回答
まず、「出向者」の意味を理解しましょう。
「出向」とは、法人が自己の従業員を他の法人に勤務させることを言います。
丸紅の場合は日本の丸紅の社員を海外の子会社などに勤務させていたことになります。
☆質問
『出向者の意味はよく分かりました。給与差額の負担金とはどのようなことですか?』
★回答
従業員の給料は労働の対価ですから、実際に働いている会社から受取るのが原則となります。
したがって、海外の子会社で社員は働いているのですから、海外子会社から給与をもらうのが通常です。
ですから、出向元の親会社が給料を負担することは通常はありません。
しかし、社員を海外の子会社に出向させるにあたり、「現在の給与水準は維持する」との条件がついた場合には、例外的に出向元である親会社が給与の一部を負担して、出向先の子会社に負担金を支払うことになります。
☆質問
『どういうケースでですか?』
★回答
たとえば、海外の出向先の子会社が発展途上国にあり、生活水準及び物価水準から到底日本の親会社の給与水準での支払をできない場合に、差額を親会社が負担するケースです。
また、子会社の業績が悪く、従業員に賞与が出せない状況で、出向元の親会社が出向者の賞与を支払うケースもあります。
☆質問
『なるほどよく分かりました。丸紅の場合は、親会社が負担した給与差額が寄付金と認定されたとありましたが、これはどのような意味があるのですか?』
★回答
新聞記事によると「子会社に支払能力があるのに親会社は給与差額を負担していた」とありました。
つまり、先ほど述べたような給与差額を出向元である丸紅が負担するような状況がないのにもかかわらず、丸紅が負担していたということでしょう。
そうすると、丸紅は負担する必要のない給与差額を海外の子会社に支払っていたことになります。
これは、「タダでお金をあげたこと」になり、税法上「寄付金」となります。
「給料手当」として費用計上していた給与差額を、ほとんど費用計上できない「寄付金」で処理することになります。
したがって納税額は増加することになります。
☆質問
『よく分かりました。理由のある給与差額の負担は問題ないけれども、理由のない負担は問題があるということですね』
★回答
そのとおりです。
法人の理由のない金銭の提供は、税務上「寄付金」とされ、ほとんど経費となりませんので注意が必要です。
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