週刊節税教室

簡易課税制度と課税期間の短縮

消費税
第42号 2002/7/15

☆質問

『今まで外注に出していたものを新たに従業員を雇って賄おうとしたところ、顧問の税理士に「原則課税より簡易課税の方が得になる」と言われました。どうしてなのでしょうか?』

★回答

原則課税は預かった消費税から支払った消費税を差引いて計算します。この場合外注費は支払った消費税の計算対象となりますが、給与は対象になりません。

一方簡易課税制度は売上から控除金額を自動計算する方法ですので、外注・給与の別は納税額に関係ありません。

おそらく税理士が両制度を試算した結果、簡易課税が有利と出たのでしょう。

☆質問

『では、すぐ簡易課税制度に切り替えたいのですが?』

★回答

それはできません。簡易課税を選択するには、適用を受けようとする事業年度の前日までに届出を出す必要があります。

☆質問

『すると今期は納税が増えてしまうのですね。何かいい方法はありませんか?』

★回答

課税期間の短縮という制度があります。通常消費税は、法人税と同じように事業年度単位で申告しますが、この制度を選択すると、消費税だけは事業年度を3ヶ月ごとに短くできます。

その制度を採った上で、3ヶ月ごとに始まる課税期間の前日までに届出を出せば、最短では、今期の4ヶ月目から簡易課税制度を選択できます。

☆質問

『なるほど。早速この制度を使ってみようと思いますが、気をつける点はありますか?』

★回答

まず課税期間の短縮も遡っては適用できません。事業年度が始まって既に半年近く経っているのに、事業年度開始日から3ヶ月ごとに区切ることはできません。

この場合には7ヶ月目あるいは10ヶ月目からの適用ということになります。そしてその届出は、適用しようとする期間の前日までに提出する必要があります。

☆質問

『他にはありますか?』

★回答

申告・納税の手間が増えることにも注意して下さい。短縮した課税期間が終わる都度、通常の確定申告と同じように申告・納税が必要です。

また、最も注意する点として、簡易課税制度も期間短縮の制度も一旦選択したら、最低2年間は強制適用になるということがあります。

途中で原則課税が有利になったからといっても、簡易課税の適用から2年経っていなければ原則課税には戻せません。

選択しようとする際には、先の見通しも含めて慎重に検討することが必要でしょう。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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