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歴史的な円安

第363号 2024年8月

1.はじめに

2022 年 10 月に 1 ドル 150 円を超え、32 年ぶりの円安ドル高となりました。その後も歴史的な円安の傾向は続き、2024 年 8 月 16 日現在で 149 円となっています。
このように、当初預け入れた外貨預金の為替レートが大幅に変動した場合、税務上どのような注意点があるのでしょうか。

2.外貨建取引の換算レート

外貨預金の預け入れや払い出し、外国に所在する不動産の取得・売却など、外国通貨により支払いが行われる取引を行った場合には、その取引の金額を円換算して各種所得の金額を計算します。
この場合の円換算レートは、取引日における対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)によることが原則とされています。

3.外貨預金の円転(個人)

外貨預金の利息は円預金同様、「利子所得」に該当し、利息を受け取る段階で税率 20.315%の源泉徴収がされています。源泉分離課税のため、確定申告不要です。
一方で、外貨預金を異なる通貨に交換した場合、取引時の為替レートの変動によって生じた利益(為替差益)は「雑所得」に該当するため、原則として確定申告が必要となります。雑所得は総合課税の対象となるため、他の給与所得等と合計し、超過累進税率(5%~45%)を乗じて所得税を計算します。
なお、外貨預金を保有しているだけであれば、実現していない「含み益」の状態であるため、為替差益(雑所得)は生じません。

4.具体例

例えば、数年前に 100 万円を米ドル外貨預金口座に 10,000 ドル預け入れ(取引日の TTM:1 ドル100 円)、この外貨預金 10,000 ドルを日本円で払い出したとします(取引日の TTM:1 ドル 150 円)。
この場合の為替差益は、以下のとおり 50 万円となります。
(算式)
10,000 ドル×150 円-10,000 ドル×100 円 = 500,000 円

5.損失が生じた場合

現在のような円安の状態であれば、為替差益が生ずるケースが多いかと思いますが、もし、為替差損が生じている場合には、雑所得の損失であるため、給与所得等の他の所得との損益通算はできません。
なお、他に暗号資産(仮想通貨)の売却がある場合の売却益は為替差益と同様、雑所得に該当します。売却損が生じた場合には、為替差損と同様、給与所得等の他の所得との損益通算はできませんが、雑所得とされる為替差益と損益通算することが可能です。

6.法人の場合の留意点

法人については、個人のような所得分類がないため、外貨預金を円転した場合の為替差損益は通常の事業活動の利益に含めて計算します。
また、決算期末において有する資産や負債については、その種類等に応じて期末時のレートで換算し直す方法で計算し、期末に為替差損益を計算する必要があります。なお、この為替差損益は翌事業年度に洗替処理をします。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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